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弁護士日記

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葉梨法相の失言をどう見るか

2022年11月11日

 葉梨康弘法務大臣が失言をした。それに対し、左翼野党の方からは法相を辞任するよう要求が出ている。しかし、このような要求は過剰(不必要)なものであって、辞任までする必要はない。理由は、以下のとおりである。
 第1に、葉梨法相の問題発言とは、新聞報道によれば「法相は死刑のハンコを押す地味な役職」というものであった。確かに、法相の仕事は、機械的にハンコを押すだけの仕事ではなく、決裁権者としての判断を求められるのであるから、それなりに重要な職務を行っているという側面があることを否定できない。
 しかし、死刑執行という手続は、法務大臣が単独の判断で、勝手気ままに決められるものではなく、法務省内における慎重な手続を経て決まるべきものである(なお、省内の細かい手続については承知していない)。
 そうすると、死刑の執行に至るまでに、法務省内の事務方(職員)において法令に従って、着々と準備を重ねて、法務大臣の下に決裁文書が回ってくるという仕組みになっていると推測できる。
 事ここに至った場合、法務大臣としては、机の上に置かれた決裁文書に目を通し、決裁印つまりハンコを押すだけの作業をすれば足るわけである。そのような実情を葉梨法相はよく分かっているので、「ハンコを押す地味な役職」という実に正直な発言に至ったものとして理解することができる。
 仮に、部下が持ってきた決裁文書を目の前にして、法務大臣が「ちょっと待った。この死刑囚の死刑執行はストップする」などと言い出したら、大変なことになろう。このような事態が生じた場合、その事実を嗅ぎつけたマスメディアは、おそらく、「法務大臣が権力を乱用して法の執行を曲げようとした」という報道をするであろう。また、考え方がすべてにおいて浅薄な左翼野党は、ほぼ確実に法務大臣の辞任を要求することになるであろう。
 葉梨法相は、私が見たところ、その専門知識の豊富なことを踏まえると、法務行政には適任者であると判断する。かつて民主党政権の下で「法務大臣は、国会の答弁の際、法と証拠に基づいて判断する、と言っておけば済む仕事」という問題発言をした低レベルの法務大臣がいたと記憶するが、そのようなつまらぬ素人に比べれば、葉梨氏は、10倍はましである。
 今回の教訓とは、葉梨法相は、正直すぎたということである。大臣になった場合、仲間内の会合であっても、本音を最後まで隠し、表面上は優等生と評価されるよう発言をしなければならない。まさに俳優のような演技力が求められると考えられる(悪く言えば、国民を騙す力が必要ということであろう)。
 第2に、左翼野党の要求であるが、くだらないの一言に尽きる。左翼野党のこれまでの行動を見ていると、取るに足らない問題(例 桜を見る会、モリカケ問題等)の追及ばかりに時間を費やし、片や、日本国の将来を左右する重要問題(例 憲法改正問題、少子化対策問題、原発再稼働問題、尖閣諸島の防衛問題、財政の健全化問題、韓国による慰安婦・徴用工などのデタラメなプロパガンダに対する対抗策を考える問題等)については、全く関心を示そうとせず、積極的な議論をしようとしなかった罪が大きいと考えるからである。
 国民から見れば、驚くほどの高額の議員歳費をもらっておきながら、それに見合う活動は何もしていないということである。左翼野党ほど、存在意義が薄弱な存在はない。早く消えて欲しいものである。
 原稿を書いている途中で、葉梨大臣辞任の速報が入った。
 辞任をするということが決まったのであれば、それはそれで仕方がない。岸田首相には、後任者には、有能で、かつ、演技力のある人物を選ぶよう求めたい。
(追記)
 本日の速報によれば、葉梨氏の後任は、齋藤健元農水大臣に決まったとのことである。この齋藤氏であるが、私の直感によれば、「可もなく不可もなし」という評価である。普通の人ということである。他に適任者がいたような気もするが、齋藤氏に決まった。岸田首相は、本当に人を見る目がないという事実を再確認した(世襲政治家の持つ限界から来ているものと考える)。
 なお、本日のニュースによれば、過去に法相を経験した人物の中には、死刑執行の決裁をする前に、自分で事件記録を読み込んだという人物がいたそうである。マスメディアでは、何か美談のように紹介されているが、とんでもない愚行である。有罪か無罪かは、司法権を司る裁判所が決めることであり、行政府が、裁判所の確定させた死刑という刑を変更する権限などない。このような法相経験者の「越権行為まがい」の不必要な行動は厳に慎むべきであり、法務大臣としては、死刑が確定した死刑囚については、100パーセント死刑を執行する以外にない(他の選択肢はないのである)。その意味で、葉梨氏の「死刑のハンコを押すだけ」という感想は、まさに正鵠を得た指摘と言えよう。
 

日時:13:48|この記事のページ

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