最近、岐阜新聞を読むと、連日のように岐阜加納ロータリークラブがらみの醜聞が報道されている。以下、新聞記事の内容が、事実関係においてほぼ正確なものであるという前提で、若干のコメントを加える。
2025年3月9日の記事を見ると、見出しは「会員ら投資25億円戻らず」とある。一体何が起こったのかと記事を読むと、岐阜市のコンサルティング会社の社長(47歳)が、岐阜加納ロータリークラブの会員らを対象に、投資を仲介するために集めた25億円を返済できない状態に陥っているという内容だった。一体、25億円もの大金を誰が何のために出したのか?
記事を読むと、当時ロータリークラブの会員であった47歳の社長は、2021年から、旧知のトレーダーに対し、「月利1.5パーセントの配当を出す」という条件で資金を預け、運用を託していたという。そのトレーダーからは、FXなどで資金を運用しているとの説明を聞いていたという。
では、なぜロータリークラブの会員が、47歳の社長に、多額のお金を預けたのか。それは、社長が会員に対し、「月利1.5パーセントの配当を受け取ることができる」と説明していたことが原因となっているようである。会員は、お金を預けたというが、新聞記事によれば、金銭消費貸借契約を結んでいたというから、正確には、会員と社長との間の貸金(借金)ということである。社長は、約20の個人や法人から1000万円~5億円を集めたという。また、社長個人も約13億円をトレーダーに預けたという。
ところが、記事に素直に読めば、会員が出した分の合計は多くて5億円どまりとなり、また、社長個人が出した分が13億円とすると、合計しても18億円にしかならず、なぜ、見出しで25億円と掲げたのか計算が合わない。しかし、仮に20の個人や法人が、各自1000万円~5億円を出したという意味であれば、計25億円になり得て話の辻褄が合う(ここでは、読者に誤解を与えかねない岐阜新聞社記者の文章力不足が窺える)。記者は、おそらく後者のつもりで記事を書いているのであろう。
ここまで聞くだけでも、何か怪しいという気がするが、上記記事によれば、社長は、トレーダーと秘匿性の高い通信アプリであるテレグラムを使用していたという。「テレグラム」と聞くと、以前、フィリピン国内の収容施設から指示を受けて日本国内で強盗事件を多く起こした犯罪者集団を思い出す。非常に胡散臭い印象がある。なぜ、履歴の残る通信方法をとらなかったのか。全く理解できない。社長は、多額のお金を会員から借りているのであるから、お金の出し入れについては、紙ベースで記録し、かつ保管する必要があった。
社長の話によれば、2024年7月までは、社長から会員に配当を払っていたが、同年11月にトレーダーと連絡がつかなくなったという。ここで、不可解な話として、この社長は、2024年11月に空き巣被害に遭って契約書などが入った金庫が盗まれたという。被害届けは岐阜北署に出しているという。しかし、トレーダーと連絡がつかなくなったタイミングで、ちょうど家に空き巣が入って、契約書などを盗まれたという説明は、非常に不自然である。
社長の話によれば、現在も、過去に運用を託していたトレーダーとは連絡が取れないという。また、会員から集めた資金があるはずの口座の残高は0円になっているという。社長は、自分が被害者であるという前提で、岐阜中署に被害届けを出そうとしたが、証明する書類がなかったので被害届けは受理されなかったという。記事によれば、この社長は、2024年8月以降、ロータリークラブの会合に出席せず、除名されたという。ここまで来ると、果たして社長のいう「トレーダー」が実在の人物であるのかどうか、疑問符が付く。
さらに驚いたのは、2025年3月14日付けの記事である。記事によれば、岐阜加納ロータリークラブの会員は、「配当」を社長から手渡しで受け取っていたというのである。当初は、ロータリークラブの会合があった会場で現ナマを受け取っていたのであるが、(内部から)批判が出て、会合の後、ラウンジで受け取っていたという。なぜ、そのような方法をとったのか?現金を手渡しで授受するということは、現金の流れが全く記録として残らない。非常に不透明な方法である。場合によっては、脱税の温床ともなりかねない。また、この社長は、ラウンジで現金で渡していた「配当」について、いくら渡したのかの記録はとっていないと説明している。余りにも杜撰な実態があったということになる。
岐阜新聞の記事から感じたことは以下のとおりである。
第1に、除名された社長の行為は金融商品取引法によって規制が及ぶ可能性も考え得るが、果たして社長は適法に登録をしていたのか。仮に登録をしていなければ、モグリ営業となる可能性がある。
第2に、岐阜加納ロータリークラブの会員たちは、なぜ今回のような怪しげでグレーな投資に、のめり込んだのか。世間の常識では、ロータリークラブの会員たちは、良き市民であり、模範となるべき人々である。良識を備えていると思われていた人々が、この体たらくである。表の顔と裏の顔は違うということか。あるいは楽に金儲けができるという話に目がくらんだというべきか。
第3に、会員が、ラウンジで「配当」を現金で受け取っていたという行動は、課税逃れ(脱税)を疑われても致し方ないであろう。この点は、おそらく税務当局も関心を持っているのではなかろうか。
以上のことから、今回の一件で世間を騒がしたといわれても仕方がない岐阜加納ロータリークラブは、けじめをつける意味で、いったん解散を検討すべきである。
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