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弁護士日記

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北方領土交渉の行方を予想する

2016年11月25日

 来月に、ロシアのプーチン大統領が我が国の山口県を訪問し、安倍首相との首脳会談が開催される。果たして北方領土は日本に返還されるであろうか?私は、今回も交渉は妥結せず、先送りになると予想する。
 その理由であるが、1945年の8月9日、当時の共産主義独裁国家であったソ連は、我が国との日ソ中立条約を一方的に破棄して我が国に対し戦争を開始した。当時の我が国は、アメリカとの戦争に疲弊し、とてもソ連と戦う力は残っていなかった。人間に例えれば、重病のために動くことすらできないような状況であった。
 自国の利益となるのであれば侵略を全く厭わないソ連は、我が国を侵略する絶好の好機と捉えて、千島列島と樺太に対する軍事的な侵略を堂々と開始したのである。当時の国際法で定められた日本とソ連の国境線は、1905年のポーツマス条約で決まっており、樺太については南半分が日本の領土であり、千島列島については、北端に位置する占守島(シュムシュ島)から南端に位置する得撫島(ウルップ島)までの全てが日本領とされていたのである。なお、歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島は、千島列島ではなく、北海道の一部にすぎない。一度も外国の支配下に置かれたことがない、我が国固有の領土である。
 そのような国際法による事実を無視して、ソ連は、我が国に対する侵略を行ったのである。その結果、当時、我が国の領土とされていた南樺太、千島列島は無論のこと、我が国の固有の領土である歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島についても、不法占拠(illegal occupation)を戦後一貫して行っているのが、ソ連でありロシアなのである。
 不法占拠の理由について、ロシア外務省は、第二次世界大戦の戦利品であるという見解をとっているが、いい加減極まる理屈である。我が国は、第二次世界大戦でソ連に対し戦争をしかけた事実はなく、それどころか日ソ中立条約を一方的に破られ、無法な戦争をソ連から仕掛けられたのである。これに対し、ドイツの場合は、ヒットラー率いるドイツ軍が一方的にソ連の領土に攻め入っているのであるから、ソ連としてはドイツに対して軍事的な反撃を行うことは自然である。
 我が国は、1951年のサンフランシスコ平和条約で南樺太と千島列島を放棄したことは事実であるが、上記のとおり、歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島は、千島列島ではなく、北海道の一部にすぎず、我が国がこれらの固有の領土を放棄した事実はないのである。
 我が国のこれまでの立場は、四島一括返還である。しかし、歴史的にみて他国に対する侵略を何とも思わないロシアが、この要求を飲むはずはない。分かりやすい例をあげれば、強盗団が住民から奪った財宝を任意に返還することはあり得ないのである。
 安倍首相がどのような提案をもってプーチンとの間で平和条約に向けた合意を形成しようとしているのかは不明であるが、現実を見る限り、歯舞群島と色丹島すら返ってこない可能性が高いと予想する。まして、経済協力を先に推進するという方法は、ロシアにうまくしてやられたという最悪の結果で終わる可能性が高く、先に経済協力を行うという案は愚策というほかない。
 ロシア流に言えば、「日本よ、文句があるなら、戦争を起こしてロシアに勝って島を取り戻せ」ということなのであろう。であれば、今後100年でも200年でも待ってその好機を狙うほかないと考える。

日時:16:16|この記事のページ

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