来る6月12日に、シンガポールでアメリカのトランプ大統領と、世界最悪の独裁国家の首領であるキム・ジョンウンとの会談が予定されている。
この話題については、テレビ、新聞などのマスメディアが、いろいろと報道をしている。その主たる話題は、果たして北朝鮮が完全な非核化に応じるか、という点に絞られているようにみえる。
いろいろな考え方があろう。日本側の立場に立って、いろいろと希望的観測を展開することは仕方がないことであろう。しかし、予測の精度を高めるためには、仮に北朝鮮の立場に立ったらどうなるか、という風に考えることが有益である。
北朝鮮の立場とは、①核兵器はこのまま保持する、②キム・ジョンウンの独裁体制を維持する、というものである。これらの2点は、決して譲歩しないと予想する。
これに対し、トランプ大統領は、①の核兵器については、数年以内を目途に、無条件で完全廃棄するという線を考えているはずである。したがって、仮に北朝鮮が、アメリカのこの要求を一切受け入れないとの態度を崩さなかった場合は、会談は即座に決裂することになるであろう。
仮に北朝鮮が、妥協して、上記①のアメリカの要求を受け入れてもよいとの立場を示す場合、何らかの条件を付してくる可能性が極めて高い。例えば、在韓米軍を韓国から撤退させることにアメリカが同意したら、北朝鮮が保有する核兵器を数年以内に廃棄することに応じてもよいという態度を示すことは十分にあり得る。
しかし、アメリカとしては、在韓米軍を韓国から完全に撤退させることを簡単に同意するとは思えない。なぜなら、仮に完全に撤退した場合、将来、北朝鮮が韓国併合を目論んで攻撃してくるおそれがあるからである。
また、仮に北朝鮮が、米朝会談の席上、数年以内に核兵器を完全に廃棄するという約束をしたとしても、北朝鮮がその約束を本気で守る気など全くないであろう。
なぜなら、北朝鮮は、キム・ジョンウンの独裁国家であるから、今後キム・ジョンウンが暗殺されない限り、その体制は今後、10年、20年、30年と継続する可能性が高いからである。そのことを常に念頭に置く必要がある。
かたや10年後には、トランプ大統領は、アメリカの大統領ではなく、ただの一私人にすぎない。したがって、キム・ジョンウンが、長期的戦略の下、今回の米朝会談を通じてトランプ大統領を騙すことに成功する事態が想定される。
仮に完全非核化の条件として、在韓米軍が韓国から完全に撤退するという話になった場合、それを一番喜ぶのは、中国とロシアである。中国もロシアも、アメリカの影響力を朝鮮半島から排除したいと考えているはずだからである。
この点に関する我が国の立場であるが、自国の安全保障の観点から、このような合意が好ましくないものであることはいうまでもない。
上記②のキム・ジョンウンの独裁体制の保証の点であるが、上記①の論点が合意に至った場合は、アメリカとしても認める用意があると予想する。
最期に結論をいえば、6月12日の米朝会談は決裂する可能性がむしろ高い。しかし、継続協議という線も消え去ったわけではないと予想する。
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