サミュエル・ハンチントン著「文明の衝突と21世紀の日本」(集英社新書)を読んだ。
この本に書かれた内容は、2000年以前に発表されているものであるが、おおよそ20年を経過した今日の状況を的確に言い表わしているという意味で、非常に深い内容を含んでいると評価できる。
ハーバード大学の政治学の教授である著者は、「文明」というものに着眼する。
著者によれば、世界の文明は、おおよそ7つのものに分けられる(24頁)。西欧文明(ヨーロッパ諸国や米国など)、東方正教会文明(ロシアなど)、中華文明(中国、台湾、朝鮮半島など)、日本文明(日本のみ)、イスラム文明(イスラム諸国)、ヒンドゥー文明(インドなど)、ラテンアメリカ文明(南米諸国など)である。人によってはアフリカ文明も加えられるが、多くの学者はこれを認めることには否定的である(124頁)。
著者は、文明とは文化の総体であり、文化を拡大したものであるという認識を示す(106頁)。そして、文明は、人を文化的に分類する最上位のカテゴリーであり、また、文化的アイデンティティーの最も広いレベルを構成していると言う(111頁)。具体的に言えば、言語、歴史、宗教、社会制度を共通とする概念である。
著者は、これからの世界は「文明の衝突」の時代に入ると予言する。つまり、同じ文明に属する国々と、異なる文明に属する国々の間で衝突が起きると言う。また、異なる文明に属する国同士の間には緊密な盟友関係は生じないであろうと分析する。
現実を見ても、日本と中華文明に属する韓国との間では、今後も、真の友好関係は生じないであろう。他方、韓国と北朝鮮は、政治体制は全く異なるが、文明は共通している。数十年後には、統一国家になっている可能性がある(ただし、一国二制度の国)。
では、中華文明の元祖とも言い得る中国とわが国の関係はどうか。
私は、極めて否定的である。理由は簡単である。今の中国という国は、かつての「中華の夢」を実現しようとして、周辺国に対し武力の行使をすることも全くいとわない国であり、到底、このような人権無視の共産党独裁国家との同盟など考えられないからである。
すると、わが国は、西欧文明に属する米国との同盟を今後も維持・発展させる以外にないという結論となる。ここで、先に述べた「異なる文明に属する国同士の間には緊密な盟友関係は生じない」という公式と矛盾するのではないかという疑問が湧く。
日本の場合は、日本という一国だけで文明を構成しているため、同じ日本文明を有する外国が存在しないという特殊事情がある。そのため、たとえ文明が異なっても、最低限、三権分立、人権尊重および民主主義を堅持する国を選んで、その国と同盟せざるを得ないわけである。その相手方が、現時点で世界でナンバーワンの国力を保有する米国ということである。この選択は、已む得ないであろう。少なくとも、他国無視の強権国家である中国と組むよりは、1000倍もマシである。
来年、中国の習近平が国賓として来日し、天皇陛下と会うという計画が進んでいる。安倍首相が何を目論んでいるのかは知らないが、日本にとっては、歴史的な愚行であると言う以外にない。このようなことは、あってはならないのである。
世界の鼻つまみ者となっている独裁国の中国を応援するようなバカげた真似は絶対にしてはいけない。仮にこのまま計画が進み、来年の春に、皇居で天皇陛下が独裁国家の首領である習近平と会われるようなことがあったら、末代まで、安倍首相に対する批判が続くであろう。
歴史的な汚点を残さないようにするため、今からでも遅くないので、計画を見直すべきである。
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