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弁護士日記

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李栄薫編著「反日種族主義」を読んで(3)

2020年05月01日

 前回に続き李栄薫編著「反日種族主義」について感想を述べる。
 今回は、日韓請求権協定と竹島問題を取り上げる。
 テレビや新聞などのマスメディアに登場する放送あるいは新聞記者出身の人間が、韓国と日本の関係についていろいろと意見を述べている場面を想起した場合、大きく二つの流れがあるように思える。
 一つは、いわゆる自虐史観を背景とした、根本的に間違った思想を基本とする発言である。純粋の日本人でありながら、反日思想を国内外に流布することを使命と考えているとしか思えない立場である。
 この立場に立った発言者の特徴は、日本という母国を大切にしようという意識が薄いという共通点がある(その証拠に、国旗である日の丸を良く思わない傾向がある)。有体に言えば、「母国である日本よりも、周辺の反日国を大切にしよう」とする意識である(それは違うという反論があるかもしれないが、少なくとも私にはそう思える)。
 すると、なぜそのような、世界標準に反した不自然な考え方が、これらの人間に定着してしまっているのかという問題に帰着する。この点については、なお研究の余地があるが、このようなおかしな考え方が発生したのは戦後であるという事実に注目せざるを得ない。
 そこで、いろいろと考えると、極東軍事裁判に行きつく。極東軍事裁判とは、一言でいえば、日本が侵略戦争を起こした。だから、指導者を犯罪人として裁くというものであった。
 しかし、これには納得できない。そもそも裁判の名に値しない。戦勝国による悪意に満ちた一方的な復讐劇にすぎない。なぜか?それは戦前において、いわゆる先進国と呼ばれる国は、いずれも帝国主義に走り、アフリカ大陸、インド、アジアの諸国などを植民地としていたからである。
 遅れて先進国の仲間入りをしようとした日本は、朝鮮半島や中国に進出した。これを「侵略」と定義する立場もあるが、であれば、英・米・仏・ソ連なども同様ではないのか?もし違うというのであれば、確たる根拠を示すべきである。
 しかし、日本は、たまたま太平洋戦争に敗れたため、その指導者たちは戦争犯罪人として裁かれたのである。もちろん、やらなくてもよい太平洋戦争に突入した軍部の愚かさは重大な非難に値する。しかし、だからといって、日本だけが悪いということにはならないはずである。
 ところが、歴史というものは、あくまで勝者の歴史であり、戦争に勝った側の主張は全て肯定され、逆に負けた側の言い分は、全く考慮されない(明智光秀が悪人と言われたのは、彼が秀吉に負けたからである。仮に勝っていたら、悪逆無道の信長を倒した聡明な指導者として、歴史上も光秀は高く評価されていたであろう)。
 万が一にもあり得ないが、仮に日本が太平洋戦争に勝っていたら、日本は善、アメリカは悪という戦後歴史教科書となるはずである。もちろん押し付け憲法も誕生していなかった。
 話を整理する。上記の反日思想を持つ者は、まさに戦後、極東軍事裁判によって、戦勝国が敗戦国である日本、より正確に言えば、日本人に対して植え付けたウイルスのような間違った考え方に感染した者たちである。自民党の国会議員を含め、これらの者たちが発する間違った言動が、今日の韓国の自己中心的で横着な行動を増長させたと言えるのではなかろうか。
 一方、日韓関係について、あくまで歴史的事実に基づいて、冷静に議論をしようという一群の人々もいる。私ももちろんそのような立場をとる。ここ10年くらいの間に、いわゆる「嫌韓本」といわれる本が多く出た。私も折に触れて読んでみたが、しかし、どこまで事実に基づいて書かれているのか、若干の疑念があった。本を書いた著者は話を誇張して述べているのではないのか、あるいは著者の勝手な願望ないし希望的観測が書かれているのではないのか、といった疑問であった。
 しかし、同時に、ここ10年間以内の韓国政府のクレージーな言動を見ていると、「お前正気か?」という感想を覚えたのも事実である。韓国政府の言動は、とうてい日本との正常な外交関係を望んでいるようには思えなかったのである。韓国政府による、数々の不誠実な行為を目にした結果、「韓国とは、あらゆる場面で極力関わらない方が良い」という結論に落ち着いた。
 話を戻す。李栄薫編著の「反日種族主義」は、日韓請求権協定について、これまで日本人が完全に見落としていた重要な視点を明らかにしている。どういうことかと言えば、韓国は「もともと請求するものなどなかった」という事実である(104頁)。
 日本と韓国は、お互いに戦争をしていなかったのであるから、通常の戦争当事者国同士の間で問題となる賠償金支払いの問題など生じないということである。
 高校生の頃、世界史の授業で、第1次大戦に負けたドイツは、天文学的な数字の賠償金を戦勝国であるフランスに支払う義務を負わされ、それがヒットラーによる第2次大戦の一因になったという話を聞いたことがある。また、日本史の授業では、日露戦争に勝った日本は、ロシアから賠償金を得たという話を聞いたことがある。
 ところが、韓国と日本の間では戦争はなかった。したがって、日韓請求権協定の本質は、日本と韓国の間の債権債務の整理の問題であるという指摘は重要である(105頁)。つまり、基本的に民事法による紛争解決ということである。
 すると、日本は、韓国を保護国(植民地)にしていたのではないのか、その賠償金は請求できないかという疑問が湧く。これについて、著者である朱益鐘氏は、「国際法や国際関係に、植民地支配の被害に対する賠償のようなものはないのです。韓国が賠償を受けようとしても、そうはできませんでした」と指摘する(105頁)。
 民事上の債権債務関係の整理が事の本質であるとすれば、韓国と日本は、相互に財産の返還、あるいは債務の履行を求めることができることになるのであり、韓国としても、当然に、日本が韓国内に築いた財産を、日本に返還する義務があったのである。
 その結果、1962年に日本と韓国は、日本が韓国に対し、無償3億ドルを経済協力資金の名目で韓国に支払うことで妥結した。そして、請求権協定2条3項には、「今後、韓日両国とその国民はいかなる請求権主張もできない」と明記された(113頁)。
 その後、韓国政府は、1965年に同請求権協定についての解説書を出し、「財産及び請求権問題の解決に関する条項で消滅する我々の財産及び請求権の内容を見れば、・・・被徴用者の未収金及び補償金に関する請求、韓国人の対日本政府及び日本国民に対する各種請求等が完全にそして最終的に消滅する」との公的見解を示している(114頁)。
 ところが、近時、韓国大統領文(ムン)の息がかかった偏波な裁判官から成る韓国大法院は、徴用工が味わった損害と苦痛に伴う請求権は、上記の日韓請求権協定には含まれておらず、現時点でも請求できるという、実に不合理な判決を言い渡したことは記憶に新しい。
 このような欺瞞と詭弁がまかり通る、韓国という国は、およそ先進国と呼ぶには強い抵抗感がある。本来であれば公正に物事を判断する職責を負う司法府までが、政治の影響を受けて、世界の笑い物となりかねない間違った判断を示しているのである。日本人の弁護士にあっても、このようなおかしな裁判に協力している者がいると聞く。私は、そのような弁護士は全く評価しない。
 なお、竹島についても、今回の本には、詳しく紹介が行われている。その詳細は、ここでは割愛する。竹島は、日本の領土であることは疑いない。以下に根拠を示す。竹島は、韓国では「独島」と呼ばれているらしい。
 第1に、日本政府(明治政府)は、1905年に、正式に竹島を日本の領土として編入し、内外に宣言した。これを知った韓国人の中には、韓国政府に対して通報した者がいたようであるが、韓国政府は、全く無反応であった(155頁)。なぜなら、竹島が韓国領であるという認識がそもそもなかったからである。
 現在、韓国は、当時は、日本の保護国になっていたため、異議を唱えることができなかったという苦しい言い訳をするが、これはおかしい。
 保護国とは、外交権がないだけの状態であり、仮に竹島が韓国固有の自国領であるという認識があれば、当然に、日本政府に対し、異議を唱えること自体はできたはずだからである。ところが、何も反応しなかったというのであるから、そもそも竹島が韓国の領有する島であるという意識がなかったということにならざるを得ない。ほかにも、いろいろと事実が掲げられているが、詳細を知りたい方は、本を自分で買って読んでいただきたい。
 竹島の問題にしろ、今回取り上げた日韓請求権協定の問題にしろ、両国の話し合いで解決できる問題とは、とうてい考え難い(少なくとも、私の認識では、解決できないトラブルである)。昔であれば、戦争でカタを付けていたであろう。
 しかし、今は、だいいち戦争などやっておられる時代ではない。戦争が始まるには、それ相当の大きな理由が必要であり、現在、日本が主導して戦争を始める可能性は限りなくゼロに近い。始める必要がないからである。今回、「戦争開始」とまでは言い難い中国発の武漢ウイルスの問題ですら、世界を含む各国に対し、極めて大きな悪影響を及ぼすに至っている。
 現在行い得ることとは、日本は正しい立場に立って毅然とした態度ないし原則を貫徹することである。韓国政府の傍若無人な主張は全部拒否し、逆に、韓国に対し、厳しい制裁を課することが一番効果的と考える。足して二で割るような中途半端な妥協は、今後さらに悪影響を生むであろう。
 新聞や放送のマスメディアに根強く巣くう反日左翼勢力は、「憲法9条を改正すると、日本は戦争を起こす国になってしまう」と扇動するが、実に無責任な主張と言うほかない。憲法9条を改正し、自衛隊を憲法上認められた正式の組織にして、欠陥憲法を世界標準のレベルに少しでも近づける必要がある。国民を欺くような間違った言論は、そろそろ止めるべきである。

日時:18:54|この記事のページ

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