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弁護士日記

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深澤諭史著「改訂版 これって非弁提携?」を読んで

2021年01月15日

 2021年も1月15日を迎えた。現時点で、武漢ウイルス(いわゆる「新型コロナウイルス」)の感染拡大は全く止まっておらず、事態が非常に憂慮される。
 さて、今回、私は非弁問題を取り扱った上記の本を読んだ。「非弁」とは、分かりやすく言えば、弁護士資格がないにもかかわらず、弁護士でないと行うことができない業務を行う者を指す。また、「非弁」は、非弁行為自体を指す意味で使われることも多い。
 では、弁護士でないと行うことができない業務と、誰でも行うことができる業務の違いがどこに書いてあるかと言えば、弁護士法72条に書かれている。
 条文の内容について基本原則だけを要約すると、弁護士(又は弁護士法人)でない者は、報酬を得る目的で、訴訟事件その他一般の法律事件に関し、鑑定などの法律事務を取り扱うことを業とすることができないというものである。ただし、同条には、「この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない」と書かれている。この規定に違反した者には刑罰が科せられる(77条3号。2年以下の懲役又は300万円以下の罰金)。
 弁護士法72条の適用については、いろいろな論点がある。
 第1に、「報酬を得る目的」について、上記の本の著者である深澤諭史弁護士(以下「深澤弁護士」という。)は、名目如何にかかわらず実質で判断されると解説する(27頁)。この点は、異論がない。この要件に当たるためには、双方において事前に報酬を支払う旨の合意がなくてもかまわないし、また、現実に報酬が支払われたか否かも関係がない。
 第2に、「業とする」点については、一般に、反復継続する意思がある場合を指すと言われている。しかし、反復継続する意思がある限り、最初の一回目であっても、これに当たると解されている。
 第3に、一番議論があるのは、「法律事件」という要件である。法律事件という要件の解釈については、大きく、事件性が必要であるという見解(事件性必要説)と、事件性は不要であるという見解(事件性不要説)に区分される(36頁)。
 ここで重要なことは、法律事件の定義について最終判断権を持つ裁判所が、どのような見解を有しているかということであり、最終的な結論はそれで決まるということである。この点について、最高裁の平成22年7月20日判決は、非弁護士(事業者)が、立ち退き交渉を本人に代わって行ったことが弁護士法72条に違反するのではないかが争われた事件で、立ち退き交渉は、立ち退きに当たっては、その時期や立ち退き料の具体的な金額が問題になることから「紛争の可能性」があるとして、事業者の弁護士法72条違反を認めた。紛争の可能性があれば、法律事件に該当するという判断を示した。
 また、最高裁の上記判決の後に出された東京地裁平成28年7月25日判決(判タ1435号215頁)は、「法律上の権利義務に関し争いや疑義があり、又は、新たな権利義務関係の発生する案件をいう」としている。この点について、深澤弁護士は、事件性不要説が妥当であるとの立場を明らかにし(38頁)、結論として、「法的紛議の可能性又は権利義務を変動する案件」との見解をとる(41頁)。私見もこれに賛同する。
 例えば、ある者Aと、その相手方Bが遺産の分割をめぐってトラブルになっていた場合、弁護士が当事者の一方に代理人として就くことはもちろん適法である。他の相続人と交した結果、相続人全員で任意に遺産分割協議書を作成することも問題ない。
 ところが、非弁(弁護士資格のない者)が、一方の代理人に就いて、遺産分割の案を提案し、また、遺産分割協議書を作成することは、非弁行為として違法となると解される。ここで、行政書士の資格がある者が、行政書士法1条の2第1項「権利義務又は事実証明に関する書類」を作成する権限があることを根拠として、弁護士と同様の行為を行うことができるか否かが問題となるが、結論を先に言えば、できない。違法となる。
 なぜなら、遺産分割協議書は、それが作成されることによって法律上の効果が発生することになるからである(権利義務が変動する効果を持つ。)。ただし、相続人同士の協議で、遺産分割の方法が既に決まっているが、形式面の点に不安があり、その点検作業を行政書士に依頼するという限度であれば許容されると解する。
 この点について、深澤弁護士は、行政書士法1条の3第1項4号の「相談」の意味に関連して、「法律常識的な整序の範囲について」の相談に応じること、及び「形式的・書式に関する程度」の相談に限定されると述べる(96頁)。私見もほぼ同じである。
 今回取り上げた深澤弁護士の著作は、弁護士のみならず、司法書士あるいは行政書士の方々にも非常に有益なものと考える。広く推薦させていただく次第である。

日時:16:05|この記事のページ

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