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弁護士日記

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竹村公太郎著「日本史の謎は『地形』で解ける(文明・文化篇)」(PHP文庫)を読んで

2014年02月17日

 本屋でたまたま見つけた本が、上記の本である。著者の竹村公太郎氏は、東北大学工学部大学院を卒業後、旧建設省に入り、河川局長などを務めた元キャリア官僚である。
 日本史関係の本というと、普通は、文学部などの文化系の学部を出た人が書くものと相場が決まっている。ところが、著者である竹村氏は工学部を出て、しかも建設省というおよそ文化とは縁遠い役所で、技術官僚としての人生を送った方である。変わった人がいるものだ、というくらいの軽い気持ちで本を買い、家で読んでみた。
 ところが、読んで驚いた。着眼点が素晴らしい。「こういう考え方もあるのか」と新鮮な感覚を覚えた。文化系の学者などでは到底思いつかない専門技術知識を基礎に自分の説を明快に書いている。
 例えば、徳川家康が開いた幕府は、江戸を本拠地と定め、全国の大名に命じて大規模な土木工事を実施した。江戸のインフラは、全国の大名が財源を負担して整備されたのである。この点について、竹村氏は、「地方大名たちの財力とは、領民から集めた年貢であった」、「つまり、江戸の都市のインフラは、全国の地方の人々の年貢で整備されていったのだ」とその本質を鋭く見抜く。
 また、参勤交代の意味についても、江戸で生活する大名やその家臣たちは、「純粋な消費者であった。江戸には生産する土地もなく、働いてくれる領民もいない。江戸ではただただ消費を行うのみであった」と指摘し、その経費を捻出するために、諸国の大名は、自分の藩でとれた農作物、海産物、特産品などを江戸や京都・大阪などに運びそれをお金に換えて、江戸での生活費に充てたというのである。
 そうすると、江戸には全国から物資や金銀が集まってくることになる。経済的に繁栄するようになれば、文化も花開くことになる。ここで、著者は、江戸文化を支えたのは、結局のところ、地方の人々であったと喝破する。さらに、著者は、江戸が一大消費地であった構図は、現代の東京にも当てはまるという。
 その一例として、学生をあげる。確かに、地方から上京して東京で学ぶ学生は、膨大な数に上るが、学生は、正真正銘、消費者である。仕送りという形で、地方からお金が東京に集まって、それが東京で消費されるのである。
 また、東京のインフラは、過去に最優先で整備されたが、そのお金は、国が全国民から集めた税金が元手になっている。つまり、地方の人々から集めた財源を東京に優先的に投資したのである。そのあり方について、著者は、「家康が江戸に入って以降の400年間、東京のインフラは地方の人々によって休むことなく整備され続けてきた。この東京が、安全で快適であるのは当たり前だ」、「今も東京には黙っていても全国から現金が送り込まれ、消費する人々が地方から集まってくる。東京が繁栄するのは当たり前だ」と説く。
 ところが、東京の人々は、東京の安全と快適さが、地方の人々の支えによって成り立っていることを知らないと、その問題点をえぐる。その理由として、著者は、東京への一極集中の結果、その事実を伝えるメディアが存在しないことを取り上げる。
 著者は、日本を代表するオピニオンリーダーたちは、「400年間東京の安全と快適さが、地方に支えられているとは露知らない。東京が消費する食糧とエネルギーが、地方から注入されていることに気がつかない」とその問題点を指摘する。このように東京人の無知と傲慢さを諌める。確かに、テレビに日々登場する言論人又は評論家たちの大半は東京在住の人々であり、彼らの口から、このような話を聞くことはほとんどない。
 その上で、著者は、地方の問題は東京の問題であり、また、地方の衰退は東京の衰退につながるという的確な分析を行う。私も全くそのとおりだと感じた。
 また、著者である竹村氏は、今後の我が国のエネルギー政策についても慧眼を示している。現在あるダムのかさ上げ工事を行い、水力発電をもっと活用すべきであると述べる。
 そして、水力発電の本質とは、太陽エネルギーであると説く。つまり、無限のエネルギーである太陽光によって海の水が温められて水蒸気となって空に蒸発し、それが集まって雨となり、その雨が日本列島に降り注ぎ、集まった雨水が川となって流れる。水力発電とは、水が流れる力を電気エネルギーに変換するものである。著者の「それは無限に続く太陽エネルギーである」という指摘は、ある意味において当たり前の話ではあるが、本質を見抜いた見解であり、私としても納得・賛成するほかない。
 私としては、本書をより多くの人々に読んでいただきたいものである。
                             

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