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弁護士日記

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非農地判断に関する農水省課長通知の内容に疑義あり

2021年04月29日

 前回、令和3年4月1日付け農水省農地政策課長の通知に法的な疑義があることを指摘した。
 今回は、それ以前に出された同じく農地政策課長通知にも疑問があることを指摘したい。その通知は、平成30年3月12日付けの農地政策課長通知「農地に該当しない土地の農地台帳からの除外について」という通知である(以下「平成30年課長通知」という。)。対象は、〇〇県担当部長となっている。
 前回も紹介したが、農水省は、平成21年12月11日に「農地法の運用について」という通知を出している。対象は、各都道府県等となっているようである。この通知(以下「運用通知」という。)は、地方自治法245条の4第1項に基づいて出された事務処理上の技術的助言としての性格を有するが、その実体は単なる行政規則にすぎず(法規命令ではないという意味)、地方公共団体に対する法的拘束力はない(通説)。
 したがって、地方公共団体としては、運用通知に反する事務的取扱いを行ったとしても、地方の事情に照らし相当な理由があると判断されれば、運用通知と異なる取扱いも許容されると解される。
 運用通知第4の(3)は、農業委員会が対象土地について農地に該当するか否かの判断をする際の手続を定める。また、農業委員会が非農地判断をした土地については、「農地台帳の整理等を行うこと」と書いている。さらに、同(4)は、対象土地が非農地に該当するか否かの判断基準を示している。それ以外に、運用通知第6・1(1)は、農地法52条の2に基づく農地台帳の作成について触れ、「地目及び面積は、登記簿に記載されている内容を記録するとともに、これと異なる現況にあることを把握している場合には、当該現況も併せて記録することが適当である」と言う。非農地判断については、それ以上の言及はない。
 ところが、平成30年課長通知は、同じく、地方自治法245条の4第1項を根拠とする技術的助言として出されているが、「2 都道府県等による独自の運用等について」という項目には、次のような記述がある。「都道府県や市町村等において、非農地判断に関して独自の要領を定めて運用を行っている場合等においては、運用通知及び本通知と矛盾が生じないよう留意すること」と。
 しかし、地方の特性あるいは事情に応じて、非農地判断の基準または手続に多少の違いがあっても当然のことであって、何も国が一律の基準を定める必要はない。各地方自治体の取扱いと平成30年課長通知との間に矛盾があっても、何ら違法とはならないのである。仮に国で統一的な基準を定めたいと考えるのであれば、法的拘束力のある法律、政令または省令で明記する必要がある。通知ではダメである。
 農地法63条1項各号に掲げられている事務は、いずれも自治事務である(地方自治法2条8項参照)。その中には、法52条の2に規定された農地台帳の作成事務もある。農地台帳の作成事務は、農地法58条1項かっこ書によって、農水大臣が出す指示の対象外とされている。農地法も地方自治体の自主性の尊重に配慮したわけである。さらに、地方自治法2条13項は、自治事務については「国は、地方公共団体が地域の特性に応じて当該事務を処理することができるよう特に配慮しなければならない」と定める。
 ところが、平成30年課長通知は、そのような地方自治法の文言を無視し、しかも、法的拘束力のない上記通知をタテに、「矛盾が生じないよう留意すること」と高圧的姿勢を示した。国が言えば、地方公共団体は何でも聞くと勘違いしている、としか思えない。今後、農水省は、行政法を専門とする学者を招き、省内で行政法の基本知識を学ぶための研修を実施してはどうかと考える。
 

日時:17:22|この記事のページ

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