2021年9月9日・10日と、恒例の農地法セミナーが名古屋市内で開催された。主催者は、日本経営協会中部本部である。コロナの影響で、教室内の空気の流通を十分に確保する必要もあり、参加可能とされる人数が制限され、最大で20名までとなっていたが、8月初旬には満席に近い申し込みがあったと聞く。ところが、8月に緊急事態宣言が新たに発令されたことが大きく影響し、参加を見合わせる自治体が続出し、結局、僅か5名の出席で終わった。
しかし、講義室での対面講義であるため、出席者の人数が少ない方が、むしろ意欲ある受講生にとっては好都合となる。理由は簡単である。このセミナーの参加者はほぼ100パーセント、自治体で農地法の業務に当たる職員で占められており、講義の中で、直接、講師である私に質問することができるが、参加者が少ない方が質問機会が多くなるためである。
講義は、初日の9日が4時間、続く10日が5時間の計9時間である。途中、休憩時間もとってあるが、講師はもちろん私一人であり、私一人がすべてお話することになっている。実質8時間以上かけて農地法の専門知識について講義をするわけである。自分で8時間以上の連続講義をすることができる体力がある間は、「現役」弁護士を名乗ってもよいのではないかと考えている。
テキストは、私が書いた「農地法読本6訂版」(360ページ。大成出版社発行。税別3600円)であり、これとは別に、筆記の労を省き、受講者が適宜メモするためのレジュメ(A4大で26ページ)が付く。テキストとレジュメは、もちろん無料で各受講生に配布される(受講料に含まれている)。
ところで、最近は司法試験の合格率も平均で40パーセントを超えるくらいの緩い試験になっている。合格者数は、年間1500人を少し下回る程度の人数である。したがって、誰でも弁護士になれる時代が到来したと言ってよい。一昔前のように弁護士になりたくても、受験に5回、6回、7回と失敗を続け、遂に資金と精神力が尽きて、不本意ながら弁護士になることをあきらめるという悲劇的な情況は、今や一掃された(なお、一昔前は、受験に2回、3回程度失敗することはごく普通の光景であった)。
半面、誰でも弁護士になれることから、弁護士の供給過剰の状態が現れており、弁護士一人当たりの平均的な収入も、一昔前のおおよそ半分となってしまった。今後も、少子高齢化(人口減少)がますます進展することが予想されるため、所得面のみに着目した場合、弁護士になるメリットはほとんどない。
ここで、「弁護士になるのはお金のためではない」という反論が出るかもしれない。もちろんそのように言うことも可能であり、決して間違った意見ではない。むしろ正論である。しかし、例えば、難関大学の卒業予定者が自分の就職先を選択する際に、なるべく条件・待遇(給料額もこれに含まれる。)が良い職種を選ぶ傾向があることも事実である。
ただし、私は、弁護士の総人数が増えることはマイナス面ばかりではないと考える。どういうことかと言えば、弁護士業界の若返りを促進することができると考えるからである。私自身も高齢者の仲間に入ってしまったが、これからの弁護士業界は、もっと若手・中堅の弁護士が中心になって活性化されることが好ましい。古いイデオロギーに縛られた古いタイプの弁護士は、もはや考え方を改めようがなく、結果、要らないのである。
若手・中堅弁護士とは異なる年寄弁護士は、若手・中堅に対し、活躍する場を譲るべきである。死ぬまで第一線で目立とうとしていると思われる年寄弁護士が一部にいるが、その姿勢は見苦しく、とても共感できるものではない。
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