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弁護士日記

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「農地法許可事務の要点解説」が出た

2023年02月17日

 令和5年1月中旬に、拙著「農地法許可事務の要点解説」(新日本法規出版)を出した。そこで、この本の性格や狙いについて簡単に紹介を行う。
 この本は、私が長年にわたって調べてきた農地法について、その内容を正しく理解するための法律的な基礎知識を読者に提供することを目的としている。
 この本は、申請者の側に対し、形式的な許可申請のための書式の内容や添付書類の調え方を教えることを目的としていない。そのような単純な事務的事項は、許可権限を持つ行政機関(許可権者)の担当職員に尋ねれば十分だからである。
 ただし、申請者側に対し、許可権者が教示(説明)してくれる範囲は、あくまで「現行法ではこうなっている」、あるいは「国の通知ではこのようになっている」、という限度にとどまるであろう。仮に申請者の方から、例えば「解除条件付き賃貸借という言い方は法的に間違っているのではないのか?」と質問しても、おそらく「国の通知ではこうなっています。以上です」で終わりになるのではなかろうか。つまり、法律的にみて納得がいくまでの教示(説明)はないと考えた方が無難である。
 少なからぬ地方公共団体の農業委員会では、某左翼革命政党のごとく、事実上の上級機関となる者の言うこと(指導内容)が絶対であり、これにあえて異論を唱えることは差し控えるという、厳しいムラの掟があるように見える(ただし、この点は個人的な印象にとどまる)。
 そこで、今回の本は、農地法の許可申請に関連して生じるいろいろな法的疑問を解くための基礎知識(法律理論)を読者に提供したものである。ここでいう「読者」とは、農地法の許可申請に関わる全ての者を指す。農地法の専門知識をそなえた許可権者の側に立つ方々はもちろんのこと、許可申請者のサイドにある人々も含まれる。さらに言えば、農地法を学習したいという意欲を持った弁護士・司法書士・税理士等の士業の方々、裁判所職員、農業委員、一般社会人、学生等も含まれる(ただし、過去に法律を学んだことがない方にとっては、内容を正しく理解することは決して容易ではないとも思われる)。
 私が特に強調したい点は、この本は、基本的に法律理論を説いた書物であって、農業書(農業技術を教える本)ではないということである。かなり前に出したことがある農地法関連の本について、そのような初歩的な点を完全に誤解した読者がいたことがあり、心底驚いたことがある。また、全国的に有名な大型書店においても、農地法関係の本が、農業専門書のコーナーに展示されている現状を見る限り(現に、丸善名古屋店では4階の「農業政策」の棚に置いてある)、仮に書店の係員であっても、未だに正しい認識を持つに至っていないことがわかる。本来、農地法の本は、法律書のコーナーに置かれるべきものである。
 なお、法的に無知な者ほど法律書の真の価値がわからず、結果、見当はずれの間違った意見を述べることが多い。特に、ネット上の評価は全然あてにならない。良い評価も悪い評価も同じく注意が必要である。要するに、本選びの参考にはならない。
 一番良い方法とは、実際に書店で本を手にとって内容を読んでみるというものである。私もこれまでパンフレット等を見ただけで本を注文したことが僅かにあったが、がっかりしたことが多かった。そのため、最近では必ず事前に本屋で本の実物を自分の目で確認し、納得したものに限定して注文することにしている(ただし、ネットで注文することは極めて少ない)。
 いずれにしても、今回の本は、法律書であり、小説やノンフィクション作品の類ではない。したがって、本の内容を正確に理解するためには、法律の条文を丁寧に参照しながら地道に読破する必要がある。
 ソファーに寝ころびながらすらすら読んで、はい分かった、おしまいという本ではない。仮にそのような安易な使用法を考えている購入予定者がいたとしたら、最初からこの本を購入するべきではない。決してお薦めしない。地道な努力ができない怠惰な者にとって、この本は「猫に小判」であって、 買っても使い途がないということである(お金の無駄となる)。
 私は、かつて農地法のセミナー等で何年も講師を務めた経験があり、その経験から言えば、セミナーの中で、受講生の方からいろいろな質問が出ることがあったが、実力のある受講生ほどまともな質問を出し、逆に理解度が低い受講生ほど頓珍漢な質問を出してくるという傾向があることが分かった。
 農地法を正しく理解するためには、農地法、行政法および民法の三つの法律の総合的知識が必要となるのであり、これらの法律を正確に理解することは決して容易なことではない。例えば、民法だけとっても、1冊で400頁を超える分厚い教科書を最低でも5冊以上読み込む必要があろう(行政法は2冊程度必要か)。しかし、そのような勉強一辺倒の修行者のような過酷な生活が送れるのは、司法試験を志す若者くらいであろう。
 そのような複雑な農地法を効率的に学ぶためには、適切な入門書が必要であり、そのため200頁程度の分量に必要不可欠の知識を圧縮して詰め込んだのが今回の本ということになる。学習意欲のある方にはお薦めの本である。反面、学習意欲を欠き、何事についても不平・不満たらたらの、いわゆる「不平屋」には、むしろこの本を読んで欲しくないというのが正直な希望である。
(付記)
 本年2月7日付けで第一東京弁護士会の図書室から「刊行物ご寄贈のお願い」という文書が届いた。手紙を読むと「当会会員にとって実務上参考になる貴重な文献であることから」、「当会の図書室へご寄贈して頂きたく、お願い申し上げます」と書いてあった。おそらく、全国の弁護士の手による新しい刊行物(法律書)が出たことを察知した場合に、機械的に各弁護士宛てに手紙を出しているのではなかろうかと推測した。第一東京弁護士会からは過去にも同様の手紙を貰ったことがあり、本を寄贈したことがあった。そこで、比較的気前のよい私は、2月16日付けで今回出した本を1冊贈呈することを決め、郵送した次第である。

 

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