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弁護士日記

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農地法研修会in大阪を終えて

2023年03月03日

 昨日(3月2日)、私は大阪市内へ出張した。大阪府農業会議が開催する農地法研修会の講師として出るためである。大阪市中央区にある会場には午後1時すぎに到着した。過去に何回も講師として来ているため、場所はよく分かっていた。
 会場に到着すると、担当者の方や事務局長の方に挨拶し、午後1時40分頃からお話を開始した。持ち時間は従来と同じ90分間である。この日は、会場に大阪府庁の農地担当者のほか、府下の地方公共団体(市役所)の農業委員会の担当者の方々がお集りであった。全部で45人ほどであったか。
 今回のテーマは、農地転用に関する法的な問題に関係するものであり、私が本年1月に出した「農地法許可事務の要点解説」(新日本法規出版社。税込み価格2420円)をテキストとして使用した。もちろん、受講生に配布するため大阪府農業会議で事前に一括購入された上で、当日、会場で各出席者に1冊ずつ無償配布されたようである。「担当者のレベルアップが重要である」という正しい認識を有する大阪府農業会議の良心的な姿勢には、ただただ頭が下がる。
 農地転用の問題に限らず、農地法の法的問題は農地法自体の理解が必要となるほか、農地法を正確に解釈するための基盤法とも言い得る民法および行政法の知識が間違いなく必要となる。したがって、農地法を完全に正しく理解することは決して容易なことではない。
 市農業委員会の担当者(地方公務員)は、基本的に一般市民や行政書士を指導する立場にあるのであるから、不断の努力によって高度の知識を涵養しておく責務があるとさえ言えよう。
 今回の農地法研修もその目的を果たすために開催されたと理解することが可能である。
 さらに法律家である弁護士の場合、原則として、農業委員会の担当者(地方公務員)を上回る法律の知識量又は理解力を具備していることが期待されるが、現実を見ると必ずしもそうなっていないことは残念である。
 例えば、ある者Aが、従来から他人Bに対しA所有農地を賃貸しているが、Bが耕作放棄状態を継続しているため、契約を解除して農地を返還して欲しいと考え、その旨をBに通知しているが、Bが話合いに応じようとしない場合、Aとしては農地法18条の知事許可が必要となることに気が付く必要がある。
 ところが、実際の民事訴訟などでは、相談者から訴訟の委任を受けた代理人弁護士がそのことを失念して、いきなり契約の解除及び農地の明渡しを求めて訴訟に至った実例がある。この例などは、完全敗訴に終わった依頼者から、「弁護過誤だ」「着手金を返せ」と言われても弁解のしようがないであろう。
 やはり、医療と同様に、依頼者が弁護士に対し、専門的知識を要する事件の解決を依頼しようとする場合は、その専門分野に精通した弁護士を選ぶ必要があろう(ただし、一般的な弁護士に依頼する場合と比べ、弁護士費用が割高になるかもしれない点はあらかじめ覚悟しておく必要がある)。
 なお、研修会の中で、受講者から、上記の耕作放棄事例のように具体的な紛争事件について法的にどうなるかの質問が出され、これに対し、弁護士が法的見解を述べることは何ら問題ない。しかし、弁護士資格のない行政書士が、同様に回答すると、仮に相当額の講師料をもらって講師を務めている場合は、「報酬を得る目的で法律事務を取り扱った」と解釈され、弁護士法72条が禁止する非弁行為に当たる可能性があるので(2年以下の懲役または300万円以下の罰金)、研修会の主催者としては十分注意すべきである。

日時:15:43|この記事のページ

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