交通事故訴訟の判決が昨日(7月3日)出た。この事件は、一昨年の10月に相談があり、即座に委任があった案件である。当事務所の場合、私に事件委任をされる方の大半は、初回の相談時に事件の委任をされる。初回の相談時から時間が経過して事件委任をされる方は少ない。
さて、今回の依頼者は、専業農家の安田さんという方(ただし、仮名です。)であった。安田さんは、車を運転中に、センターラインを超えて暴走してきた車と正面衝突し、衝突の衝撃で胸骨等を骨折した。その後、地元の病院で治療を受け、症状が固定したが、肩関節の可動域に制限が生じ、また、鎖骨に変形障害も残存した。
任意保険会社を通じて後遺障害の等級認定をしてもらったところ、12級5号の認定を受けた。認定の理由は、変形障害であった。関節の可動域制限の方は、自賠責の認定基準に達していなかったため「非該当」であった。
その後、安田さんは、自分一人で任意保険会社と示談交渉をされたが、任意保険会社からの回答額は340万円であった。安田さんは、その金額に不満を覚え任意保険会社の担当者とさらに交渉されたが、担当者からは「それ以上は無理です」という答えを得た。
そこで、安田さんは、当事務所に相談に来られたわけである。
当職が見たところ、裁判に訴えれば、1000万円程度には到達する可能性が高いと判断し、そのように助言をした。その助言を信用された安田さんは、すぐさま当職に委任をされたのである。
当事務所は、当職が、全部の交通事故の訴訟案件について責任を持って対処している。雇用した若手弁護士に事件を丸投げするというような事態は決して起こりようがない。当職が全責任を持って事件処理をする体制をとっているため、当職自身も、常に最新の判例情報を勉強して仕事に生かそうとしている。
さて、訴訟は、昨年(平成24年)4月に始まった。主要争点は、安田さんの労働能力喪失率が何パーセントかという点、および逸失利益を算定する際の基礎年収をいくらとみるべきかという2点であった。
昨日の判決によれば、労働能力喪失率は、自賠責保険では非該当とされた関節可動域制限を根拠として14パーセントが認定された。反面、自賠責保険で等級の付いた変形障害については労働能力喪失率は否定された(しかし、この判断には疑問がある。)。労働能力喪失期間は67歳までではなく、10年間とされた(この点もやや疑問がある。)。
基礎年収については、安田さんが借り入れた公的な農業資金をきちんと返済している事実などを考慮して賃金センサスの572万円であると認定された。
その結果、裁判所が加害者に支払を命じた金額は1179万円とされた。この金額は、任意保険会社が提示した示談金額の3.4倍に相当する金額である。
現時点では、安田さんとしては名古屋高裁に控訴をするかどうかは決めていない。また、被告の方が控訴をしてくる可能性もある。
仮に、双方とも控訴しなかった場合、安田さんが受け取られる賠償額は、事故日から年5パーセントの遅延損害金が加算されるから、1360万円程度となるはずである。
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