自転車で登校中の高校生が、信号機のない交差点で出会い頭に自動車と衝突し、脳に損傷を受けたため、高次脳機能障害になった事件の判決が先月名古屋地裁で出た。判決は、加害者に対し、5177万円の損害賠償金を支払うよう命令した。
私は、かなり以前から、交通事故の損害賠償事件については、被害者側の事件しか受任しないことにしている。仮に加害者側の代理人を務めることになった場合、その良心に反するような主張を裁判所で行わざるを得ず、そのような不本意なことをしてまで、代理人をやりたくないというのが主な理由である。要するに、私が重要と思うこととは、被害を受けて苦しんでいる方々の救済をすることであって、間違っても、他人に害を与えておきながら責任を取ろうとしない人物・団体の立場を擁護することではない、ということである。
さて、今回も、被害者である高校生Aさんの代理人を務めた。高次脳機能障害の事件においては、自賠責保険で正しく障害等級を認定してもらうということが最重要である。その場合、普通の事件のように保険会社に等級認定を任せるのではなく、自分で弁護士費用を支出してしっかりと等級の認定を受けるということがきわめて重要となる。なぜなら、障害等級が少しでも上がれば、賠償金額は、場合によっては1000万円単位で増加することになるからである。僅か20万円程度の費用を節約したいという理由で、加害者側の損保会社に障害等級の認定を任せてしまったばかりに、1000万円単位の損をするということがあったとしたら、非常に損な話である。
判決は、当時の高校生Aさん(現在は大学生)について、労働能力喪失率90%を認め、後遺障害逸失利益として6507万円を認めた。その他にも介護費として702万円(日額1000円)が認められた。さらに、弁護士費用として433万円を認めた。結局、裁判所は、損害賠償額として合計で9970万円を認めたが、被害者であるAさんに30%の過失があると認定したため、その分が控除され、また、既払い金額も差し引かれたため、賠償命令額は、上記のとおり、5177万円とされた。
今回の金額は、実は、私が、判決前に自分で査定した金額に極めて近い金額であった。原告及び被告の双方に控訴をさせないという意味では、バランスのとれた金額といえる。
以上、最近の交通事故裁判の一事例として紹介をさせていただいた次第である。
Copyright (c) 宮﨑直己法律事務所.All Rights Reserved.