今年の12 月に入って、名古屋地裁に提訴した交通事故裁判の判決が出た。その交通事故とは、平成16年の秋に発生したものであったが、被害者の遠藤良子(ただし、仮名)さんは、頭部に大怪我を負って、高次脳機能障害と判断されたのであった。その後、遠藤さんは、脳機能回復のための治療を受けたが、余り改善はみられず、翌平成17年の秋に症状が固定し、自賠責保険によって併合4級の認定を受けた。
同じ年の年末に、加害者側の損保会社の担当者から、「免責証書」が被害者の遠藤さんあてに郵送されてきた。当時、遠藤さんは、家族の人の助力を受けて生活していたが、
免責証書の法律的効力について正確に理解していなかった(理解できていなかった)。上記担当者からの「お金を振込みます」という言葉を単純に受け取り、単に、賠償金が振り込まれるだけのこと、という程度の理解しかなかった。そこで、署名捺印して損保会社に返送した。
その後、平成18年の春になって、損保会社の担当者から遠藤さんあてに、「損害賠償額計算書」が郵送されてきた。それによれば、後遺障害分を含めて最終支払額として、200万円余りの金額が提示されていた。この金額に疑問をもった遠藤さんの家族は、第三者に参考意見を求めたところ、金額が低すぎるという回答を得た。
結局、遠藤さんは、弁護士である私に訴訟を依頼され、1年半余りの裁判を経て、冒頭で述べた判決が出たのであった。
判決主文の金額は、3082万円余りの支払を被告に命じるものであった。提訴前に損保会社の担当者が提示した金額が200万円余りであったから、実に15倍以上の金額となった。この判決は、将来の見守り介護費を認めた点が、注目すべき点である。高次脳機能障害の被害を受けられた方々の中には、一見すると、普通の方々とそんなに変わらないように見えることがある。
しかし、実際には、記憶力や判断力などに大きなダメージがあるため、一定のレベル以上の障害を負っている場合は、少なくとも家族等による見守り介護が必要となる。ところが、従来、その点が余り重視されなかったきらいがある。今後は、今よりも積極的に将来介護費を認めていくべきであると考える。
今回の判決について、加害者側は、とうてい承服し難いとして、名古屋高裁に控訴してくる可能性がきわめて高い。しかし、被害者側の代理人としては、あくまで被害者の正当な権利利益を守るだけである。私としては、今後もしっかりと訴訟活動を行う方針に、いささかの変更もない。
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