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弁護士日記

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最新交通事故判例紹介(その7)  損害賠償請求権の消滅時効の起算点を、被害者が医師から症状固定の診断を受けた時とした事例

2018年02月01日

 交通事故によって被害者に治療費などの損害が発生した場合、被害者は、加害者に対し、一体いつまで賠償請求権を行使することができるのであろうか。常識で考えても、いつまでも無期限で可能ということにはならない。
 この点について、現行民法724条は、「不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。」と定めている。
 この条文を簡単に言えば、例えば被害者Aが、加害者Bによる不法行為によって事故に遭い、いろいろな被害を受けたことを知った日から3年が経過すると、損害賠償金は消滅時効によって消えてしまう、つまり3年が経過すると、加害者Bに対し賠償請求をすることができなくなってしまう、ということが分かる。
 しかし、ここで疑問となる点として、仮に治療期間が長引いてしまい、治療中に、事故発生日から3年を過ぎてしまった場合に、そのことだけで賠償請求権が消えてしまうのか、という疑問である。このような場合、仮に消えてしまうということになると、その結論は誰が考えてもおかしいということになる。
 この点について、最高裁の平成14年1月29日判決は、加害者に対し賠償請求が事実上可能な状況にあることが必要であるとする。次に、賠償請求が可能な程度に損害及び加害者を知った時から3年という意味であるとする。つまり、「損害を知った時」とは、損害の発生を現実に知った時を指す、というのが最高裁の立場である。
 この最高裁の考え方によれば、被害者Aが、加害者Bに損害賠償を請求しようとした場合、こと後遺症に関係する賠償金(後遺症慰謝料、逸失利益など)については、そもそも症状が固定するまでは消滅時効は進行しない。
 この点について、高松高裁平成27年7月23日判決は、「交通事故により傷害を受けて後遺障害の存する被害者が加害者に対して損害賠償請求をする場合において、[中略]被害者が損害の発生を現実に認識した時と評価することができるのは、基本的には、被害者が医師から交通事故による傷害の症状が固定した旨の診断を受けた時と解するのが相当である。」とした。
 実務的には、医師が作成した後遺障害診断書の症状固定日の日時が重要となる。ただし、ここで気を付けなければならない点がある。それは、仮に被害者Aが、自分には後遺症が残っているはずだと考えて、自賠責保険に対し、後遺障害についても被害者請求をしたところ、自賠責保険(損保料率機構。いわゆる調査事務所)が、被害者Aには自賠責保険でいう後遺障害が残存していない、つまり「非該当」であるという判定を行った場合である。
 この場合、仮に被害者Aが、「そんなはずはない」、「後遺症による賠償も可能だ」と思って、事故日から3年経過後に、弁護士に依頼して加害者Bを被告として後遺症による賠償を含む損害賠償請求訴訟を提起したとしても、裁判所が、自賠責保険と同様に後遺障害が残っていないという判決をした場合、結局、後遺症が認められなかったことになるから、消滅時効の起算点は症状固定日からという原則の適用はなくなる。
 この場合は、事故後に、治療費、通院費、休業損害などが次々と発生し、損害として確定した時点から、それぞれ3年が経過すると消滅時効にかかると考えられる。なお、反対説として、一連の損害が全体として確定した日(最終日)を、これらすべての損害合計額の起算日とすべきであるという立場もあろう。
 したがって、被害者側としては、消滅時効の問題が発生しないようにするためには、ともかく事故から3年以内に訴訟を提起しておくことが肝要ということになる。
 なお、改正民法724条の2は、特に生命・身体の侵害による賠償請求権について、現行民法724条の「知った時から3年間」を「知ったときから5年間」に延長している。

日時:14:47|この記事のページ

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