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弁護士日記

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運行供用者責任について

2010年12月22日

 例えば、車の運転者Aが、他人Bから預かった幼い子供Cを、自分の所有する車に乗せてB宅に行く途中で、所用を済ますため、たまたまその車から離れたとする。ところが、Aが車を離れた隙に、子供Cがパワーウインドウのスイッチに触れたことによって、そのウインドウが動き出し、子供の首が車とウインドウガラスの間に挟まれ、Cは負傷し、入・通院費用が200万円発生したとする。
 この場合、車の運転者Aに民事上の損害賠償責任はあるだろうか?また、仮にあるとした場合、自賠責保険を使うことができるだろうか?
 いろいろな考え方があるかもしれないが、私の結論は、運転者Aの民事損害賠償責任は認められるし、自賠責保険も使えるということである。
 まず、運転者Aは、車を離れる際は、車に残された幼い子供Cが勝手に車のパワーウインドウを触れないようにして、事故を未然に防止する義務があったと考えられる。ところが、Aは、Cがスイッチ類を触っても、パワーウインドウが自動的に動かないようにロックすることを怠った。そこに過失又は不注意があったと考えられる。したがって、運転者Aは、子供Cを安全にB宅まで送り届ける義務に違反したことになり、民事上の損害賠償責任を負担すると結論付けられる。
 ここでの最大の問題は、自賠責保険を使えるか?という点である。
 運転者Aが自賠責保険を使えるとは、要するに、自賠責保険から損害賠償金が出るということである。自賠責保険が使えれば、場合によっては、A自身としては負担すべき損害賠償金はゼロ円となることもあり得る。したがって、Aにとっては、非常に重要な問題となる。
 また、怪我をした幼児C及びその親Bにとっても問題の重要度は変わらない。仮に、A自身に財産がほとんどないような場合は、仮に、Aを訴えて勝訴しても、現実に賠償金を受け取ることはできないことになり、被害者の実質的救済にはならないからである。
 さて、自賠責保険が使えるためには、運転者Aに自賠法3条の運行供用者責任が発生する必要がある。そのためには、次の各要件を満たす必要がある。
(1)Aが運行供用者であること。
(2)本件車が運行の用に供されてCの身体が害されたこと。
(3)Cに損害が発生したこと。
(4)Cの身体傷害と損害発生との因果関係があること。
 これらの要件のうち、(1)、(3)及び(4)については問題なく認められる。
 問題は、(2)の要件である。果たして、Aによる車の運行によってCが負傷したといえるかという問題である。車の運行とは、普通は、車が走行している状態を想定しているが、今回のように、停止した状態の車のパワーウインドウが開閉することも、「運行」に当たるとみるのが多数説である。
 参考になる判例として、東京地裁の平成21年3月30日判決は、停止しているタクシーの後部座席の右ドアを開けた際に、たまたまタクシーの右側後方から進行してきた自転車に、その開けたドアが当たって、自転車に乗っていた被害者が死亡したという事件で、ドアの開閉は「運行」に該当するとした。
 以上のことから、C及びBは、A車の自賠責保険に対し、自賠責保険の請求を行い(これを「被害者請求」という。)、損害賠償額の支払を受けることができると考える。仮に、自賠責保険がこれを争う場合は、自賠責保険を相手に訴訟を起こして紛争を解決するほかない。
 また、仮に、自賠責保険から損害賠償額の支払を受けることができても、なおCの受けた損害が完全に塡補されていないと考えられる場合は、今度は、A個人を相手に損害賠償請求訴訟を起こすほかない。

日時:16:52|この記事のページ

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