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弁護士日記

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自転車と道交法

2019年08月17日

 多くの日本国民にとって、自転車という乗り物は非常に便利な乗り物である。ほとんどの国民は、子供の頃に自転車に乗ることを覚え、やがて学校への通学手段として利用されることも多い。大人になっても、買い物や通勤で利用することも日常茶飯事である。
 ここで、道路における交通のルールを定めたものとして道交法がある。やや以前のことであるが、平成27年の当時、道交法が改正され、改正のポイントとして盛んに報道された点がある。
 その一つは、自転車は「軽車両」に当たるので、歩車道の区別のある道路では、車道を通行しなければならないというルールである(17条1項)。もちろん、歩道を通行してもよいとされた例外的な場合は別である。
 私も、当時、道交法の精神にのっとり、いつも走っている歩道ではなく、車道を自転車で走行してみたことがある。この行為は、道交法に適合する模範的な行為であり、法的には全く問題がない。
 しかし、実際に車道を走行してみて、非常に危険だと感じた。後ろから高速で迫ってくる車が、まさに走行中の自転車のそばを追い越した際には、風による圧力を感じた。そのとき、一歩間違えば、車に轢かれて死亡する可能性が高いと感じた。それ以来、私は車道を走ることは、極力控えている。
 車道を時速40キロメートル程度の速度で走行する車の運転者の側から見ても、「車道の端を走る自転車は危ない。なるべく車道は走って欲しくない」というのが実感ではないのか。
 仮に重大事故が発生した場合、バカを見るのは自転車に乗っていた人間である。いわゆる「やられ損」ということになる。もちろん、民事裁判に訴えれば、それなりの賠償金は貰えるが、そんな賠償金など、遺族にとってはほとんど意味がない。なぜなら、いったん失われた人命は、二度と戻ってこないからである。
 ここで、私が言いたいこととは、国民が「自転車は車道を走れ」という法律に従うことは結構なことではあるが、しかし、時と場所を選んで、適切に判断しないと、当人及び家族にとって取返しの付かない不幸が待っているということである。まさに「自己責任」なのである。
 この道交法の改正を主導した当時の警察庁の交通局長は、果たして実際に自分で自転車に乗って交通量の多い街中を走った経験があるのであろうか?
 日頃、運転手付きの黒塗りの公用車で送り迎えをしてもらっている結構な身分(高級官僚)であるから、おそらく実際に自転車で車道を走って危険な目に遭ったことはないのではないのか。このような、立法の担当者が実体験をしていないから、このような硬直した不合理な改正法が国会を通過してしまうのである。
 私が思うに、このような、現実に合っていない法律ができた元凶は、自転車=軽車両=車両の仲間というおかしな原則が現行法で存在するからである。そろそろ、自転車は、車両の仲間ではなく、人と車両の中間的な、独立したもの(自転車)に当たるという方向で法改正を検討すべき時期に入っていると考える。

日時:12:01|この記事のページ

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