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弁護士日記

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岐阜新聞「分水嶺」に問う

2019年12月17日

 本日(12月17日)の岐阜新聞1面「分水嶺」を読んでいたら、NHKの大河ドラマ「いだてん」の視聴率について最低平均視聴率を記録したことについて触れられていた。私は、このドラマは最初の頃、数回にわたって数分間ずつ見たが、全く面白くないため、以後、一切見ていなかった。
 同紙24面に細かい記録が出ているが、全47回の平均視聴率で「初めての1桁台を記録した」と報道されていることから、大河ドラマ始まって以来のワーストワンを記録したということになる(関東で8.2%、名古屋で7.9%、関西で7.1%)。
 これが民放であれば、視聴率の低迷を理由に開始数か月で打ち切りになるところであるが、製作者が金満体質のNHKであるため、最終回まで放送されたのであろう。マラソンに例えれば、ふらふらの状態で42.195キロを走り切ったということか。NHKに対しては、今後は、国民から徴収した受信料を無駄使いしないようクギを刺しておきたい。
 さて、本日の岐阜新聞の「分水嶺」は、安倍政権が長期にわたって続いていることを批判的に見た上で、安倍内閣の閣僚について疑惑が生じたり、桜を見る会をめぐって問題が発覚したことに触れた上で、「改憲にこだわる自民党総裁の任期を延ばす動きに付き合わされるのは迷惑千万だ」と結ぶ。
 この意見を書いた人物に問いたい。どうしてこのような結論になるのか、よく分からないからである。
 「改憲にこだわる自民党総裁」とは安倍晋三総理個人を指しているのか?あるいは、「改憲にこだわる自民党」の総裁一般を指しているのか?「分水嶺」を書いた人物が安倍内閣を批判しているという文脈から解釈すると、前者となる。
 そうすると、この人物は、安倍晋三総理個人の任期を延ばすことには反対しているということになる。
 ところで、この人物は、わざわざ「改憲にこだわる」という文言を付加していることから、憲法改正に反対する立場をとっていることが推測される。なぜなら、安倍内閣の閣僚の不祥事などを問題視したいだけであれば、「改憲にこだわる」という文言を付け加える必要ないからである。
 すると、この人物が言う「改憲」とは具体的に何を指すのかという問題が生じる。合理的に考える限り、憲法9条2項に行きつく。要するに、この人物は、憲法9条2項の改正には賛成できないという思想の持主であることが推測される。政治的には、左派政党の主張と同じということである。
 ここで、私はこの人物に質問する。この人物は、新聞紙という極めて公的な役割を担う手段を通じて自分の意見を述べ、かつ、それを世間に拡散しようとしているのであるから、自分の意見を発信する以上は、その内容について責任を持つべきであると考えられるからである。
 質問1 本日の分水嶺を書いた人物は、日本国憲法の全体について、ひととおり勉強したことがあるのか?
 質問2 憲法9条2項は、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権はこれを認めない」と規定する。この条文に関する日本国政府の見解つまり憲法解釈とは、9条2項が禁ずる「戦力」とは「自衛のための必要最小限度を超えるもの」であり、自衛のための実力つまり「自衛力」を保持することは認められるというものである(佐藤功著「日本国憲法概説全訂第3版」86頁参照)。
 政府見解も、かなり無理をして憲法解釈をしているが、その原因は、憲法の条文が最初から間違っていることから来ている。およそ、自国を守る軍事力を備えない国家など地球上にはないのである(一部に軍隊を持たない国があるではないかという反論をする者がいるが、そのような国家はそもそも侵略に値しない国家か、または合理的に考えて他国が侵略する可能性を想定することができない環境下にある国であり、そのような国を例に挙げるのは、全く不当である。)。
 仮に無理を重ねた政府見解を支持した場合、この見解によっても、日本国防衛のための自衛力を認める立場にあることは明らかである。一口に「自衛力」と言っても、具体的には、その自衛力を行使する国家機関が必要となるわけである。
 自民党の見解が最終的にどのようなものとなるかは知らないが、自衛力を組織的・効率的・合憲的に行使するために、現に「自衛隊」がある。その自衛隊を憲法9条2項に明記するという方向が現時点における安倍内閣の方針と聞く。であれば、憲法9条2項に自衛隊の存在を認めるための憲法改正は全く問題がないことになる。換言すると、自衛隊という実力組織の存在を憲法に明記しておく必要があるのである。
 これに対し、立憲民主党などの野党は、今のままの状態でも何ら支障がないのであるから、自衛隊を明記するための憲法改正には反対するという立場をとっている。しかし、この立場は、憲法を無理に解釈した結果として生じた、いわゆる「解釈改憲」を是認するという立場であり、到底支持できない。現実を直視しようとしない「事なかれ主義」ではダメなのである。
 法律というものは、時代の変化に伴って条文が改正されるのが当たり前のことである。その典型例が税法である。税法は毎年のように改正されている。国民生活に深く関与する民法ですら、現状に適合させるべく、近時、大幅な改正が実現している。
 憲法も法規範の一種であり、時代の変化に合わせて改正を行う必要がある。「イスラム法典」のような宗教上の教義を規定したものではないのである。まして、日本国憲法は、建前はともかく、実質はアメリカが日本の弱体化を狙って制定するよう日本に押し付けたものであり、このような最初から間違った憲法は、本来であれば、昭和40年~50年の時代に改正を済ませておくべきものであった。
 私の理想は、憲法9条2項は「日本国民の平和と安全を保持するため、わが国は陸海空軍を保持する」という内容である。
 一体、岐阜新聞の「分水嶺」を書いた人物は、憲法9条2項について、あるいは世界情勢についてどのような考え方を持っているのか、本人から、じっくりと話を聴いてみたいものである。

 

 

 

日時:11:43|この記事のページ

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