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弁護士日記

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ゴーン被告が逃げた

2019年12月31日

 2019年の12月31日、日産自動車の元会長であるゴーン被告が不正な手段を使って故郷のレバノンに逃げたことが分かった。
 報道によれば、偽のパスポートを使って出入国管理当局の担当者を騙し、プライベートジェット機に乗って海外(レバノン)に逃亡することに成功したらしい。
 国際空港が年末の忙しい時期を迎えたことを利用しての計画j的犯行であって、実に悪質である。ゴーンは、本日、日本の司法制度を批判する声明を出したが、ゴーンのような汚い手を使って国外逃亡を図った者には、そのような批判をする資格などない。こんな卑劣な男が日産自動車で権力をふるっていたのかと思うと、暗澹たる気持ちになる。
 以上のような事実関係を踏まえ、将来、どのような問題が発生するかについて、私の予想を述べる。
 第1に、レバノンに逃げた理由であるが、ゴーンの国籍がある国であるから、地球上において逃亡先としては一番適している。また、日本とレバノンの間には、犯罪人引渡条約が締結されていないため、日本が、ゴーンが被告人であるという理由で、引渡しを求めても、レバノン政府がこれを拒否した場合、事実上、引渡しは不可能となる。つまり、ゴーンは、終生、レバノンで安穏な生活を送ることができる。
 第2に、2020年の4月に始まるとされている公判つまり刑事裁判は、そもそもゴーン被告が再び日本に戻って来ることは考えられないため、裁判所としては、被告不在のまま開廷することを決めるのかどうか見ものである。もちろん、刑事訴訟法上、一定以上の重い罪(公訴事実)については、被告不在で審理を進めることができない。今回、裁判所がどのような判断を示すか、注目される。
 第3に、なぜ偽造のパスポートであることを出入国の管理担当職員が見破ることができなかったのかという疑問がある。年末時期に出国をしようとする大勢の旅行客がいたという事情もあって、審査が普段よりも緩くなっていた、あるいは杜撰になっていたのではなかろうか。しかし、「絶対にあってはならない」ことが起きてしまったのである。
 ゴーンが出国したのが、羽田か成田かは分からないが、出入国管理当局の幹部は、ゴーンが偽のパスポートを用意して出国を図ることまで、念頭に置いて警戒し、末端の担当者に対し、特段の注意を払うように指示を出しておくべきであった。私が仮に出入国管理の責任者であったとしたら、ゴーンの顔写真を特別に作って、この顔には特に注意するよう指示を出していたであろう。実に残念である。警戒を怠ったと推測される出入国管理を司る幹部職員の責任は極めて重大であり、単なる戒告程度では済まないであろう(辞職もあり得る)。
 第4に、弁護人の責任である。弘中弁護士は、刑事弁護人として保釈がとれるよう、いろいろと条件を工夫して裁判所に示し、結果、保釈が裁判官によって認められた。ところが、依頼人であるゴーン被告が海外に違法な手段を使って逃げてしまった。
 刑事弁護人にとって、これは全く想定外のことであったであろう。逃亡を図ったこと自体は、ゴーンが全責任を負うべきである。しかし、逃げられてしまったという結果責任について、今後、同人の弁護人である弘中弁護士がどのようなコメントを出すのか注目される。「自分も驚いている」という程度のコメントでは終わって欲しくないものである。
 第5に、保釈を許可した裁判所の責任である。裁判所つまり裁判官としては、刑事訴訟法に従って保釈を適法に出したということであり、今のところ違法問題は生じないであろう。
 しかし、昨今、保釈を出した被告が逃亡してしまうという事件が何件か起きている。このような事態が起こっても、裁判官は、自分の行った判決とか決定には一切法的責任を問われない。ある意味、「無責任」な仕事である。これは「司法権の独立」という憲法上の大原則から来ていると解してよい。
 今後の対策であるが、保釈自体を厳格に審査するという方法もあろうが、それに代わって、保釈保証金を今の2倍程度に増額するとか、あるいは保釈中に逃亡した場合は、刑が加重されるよう法改正を行い、今後は、保釈中の逃亡を絶対に許さないという制度を早急に構築すべきである。

日時:14:35|この記事のページ

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