本日(2020年11月4日)付け産経新聞の記事によれば、「官僚ストレスで治療 業務を圧迫」という見出しが載っていた。
内容を読むと、立憲民主党の原口一博議員が、内閣府の担当者(官僚)に対し、「人事に関することだから答えられないってずっと言ってきましたよね?それは認めますよね?録音にも残っていますよ」と迫る様子が書かれていた。
上記記事は、「合同ヒアリングでは多数の議員が高圧的、威圧的な態度で少数の官僚に詰問。その様子をインターネットで中継しており、『公開リンチ』(与党関係者)、『集団つるしあげ』(国民民主党幹部)とも呼ばれる」と解説していた。
この件については、私も過去に、左翼野党の面々が、国会の部屋に霞が関の官僚を呼び付け、直接に質問(正確には詰問、批判、非難等)を加えている場面をテレビのニュースで見たことがある。
その際、議員バッジを付けた左翼野党の面々の姿は、水戸黄門などの時代劇でお目にかかる悪代官の姿と非常に似ていと感じた。つまり、権力を持つ者(強者)が、権力には逆らえない者(弱者)に対し、無理難題を押し付け、いじめを行っている姿と同じであると思った。実に恥ずべき姿である。
一口に国会議員と言っても、与党議員と野党議員では、やり甲斐の有無の点で相当違うのではなかろうか。
与党の議員であれば、政府の大臣、副大臣、政務官などに登用されて、現場で自ら実務を学ぶことができる。それによって、与党議員には全体として、統治機構を円滑に運用するための実務的な知識と経験が蓄積してゆく。
また、霞が関の省庁サイドとしても、与党は、自分の役所の大臣を出している政党であるから、当たり前のことであるが、法案を成立させるためには、法案成立に必要な国会の議席を保有する与党議員に対し、説明を丁寧に行い、本会議の採決を見越して法案成立に対する理解と同意を取り付ける必要がある。
一方、野党の議員には、上記のような政権を運営するための知識や常識が身につかない。学校の生徒に例えれば、勉学機会を学校から与えられていない生徒と同じである。したがって、与党議員との「学力差」は年々拡大する一方である。
そのため、今回の原口議員のような勘違い人間が現れる。どの点を勘違いしているかと言えば、官僚は、同じ公務員であっても、一般職の公務員であり、例えば、日本学術会議の会員のような特別職の公務員とは全然違うという点である。
一般職の公務員は、各省庁のトップ(大臣)の命令に従う法的義務がある。行政法では、大臣は「行政庁」といって当該省庁を正式に代表する立場にあるが、部下である局長とか課長は、「補助機関」といって大臣を支える立場にある。したがって、例えば、省の大臣Aの方針に従えない部下である公務員Bを、大臣Aは人事権を適切に行使して、Bを現在の担当部署から別の部署に異動させることも自由に行い得る。これが人事権である。
他方、日本学術会議の場合は、内閣総理大臣といえども、日本学術会議の会員を新たに任命するには、同会議の推薦が必要である。自分勝手に自分の意向に沿う人物を任命することはできない。また、同会議法26条には、会員として不適当な行為があるときは、同会議の申出に基づき当該会員を退職させることができる、とある。したがって、会議の申出がない限り、会員の身分は保障されている。
このように、一般職の公務員と日本学術会議の会員では、身分の保障の度合いが全く違う。これを混同して議論することは、そもそもできない話である。ところが、報道によれば、立憲民主党の今井という議員は、菅総理の著書に、自分の政策に反対する職員については、人事権を行使して異動させることが自由にできると書いてあったという箇所を引用し、日本学術会議の会員についても同じような考え方で臨んでいるのかという趣旨の質問をしていたが、話にならない。このレベルでも、予算委員会で質問を行うことが許されるという点は驚きである。
基本原理原則が全く分かっていないまま、ただただ菅総理をこき下ろそうという意図の下に、実に下らない質問を行っているのである。時間と金の無駄という以外にない。立憲民主党の国会議員の見識の低さを露呈した結果となった。
話がやや逸れた。このようなレベルであるから、左翼野党の国会議員は、長期間にわたって冷や飯を食わされている。上記のパワハラ合同ヒヤリングには、うっぷんを晴らそうとする意図があったことを否定できないのではないか。長期間にわたって国家行政に参画できない惨めな環境に置かれていることから、ストレスが溜まり、不満のはけ口として、弱い者の立場にある官僚をイジメていると考えると合点がゆく。
しかし、一般職の公務員は、あくまでトップである内閣総理大臣または各省大臣の方針に従って動くべき立場にあり、そのような立場にある公務員に対し、立場上答えられない質問をする左翼政党の議員の異様な姿勢は、どう理屈をこねても正当化できない。直ちに誤りを改めるべきである。
なお、立憲民主党の枝野党首は、国会議員会館で(禁止されている)タバコを吸っていたと報じられたことが過去にあり、その際、枝野党首は、「知らなかった」と答弁したという話を聞いたことがある。おそらく、「自分に優しく、他人に厳しい」という信条なのであろう。
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