岐阜県知事の現職である古田肇氏が、5選出馬を表明したのは2020年11月20日のことであった(岐阜新聞12月11日付け朝刊記事を根拠とする)。現職が出馬を表明するかどうかは、本人が決めることであって、周囲がどうこう言う資格はない。しかし、上記新聞によれば、自民党の野田聖子国会議員らは、本年10月9日に、古田知事の続投を支持する覚書を作成したとある。そして、古田知事は、わずか3日後の同月12日、5選出馬の意向を表明したという経緯がある。
この経緯から、古田知事は、現職最後の年である2020年度に入ってから、自民党の国会議員らと秘かに出馬に向けた調整を行っていたと推測される。もちろん、県知事という職業は、政治家であることは疑いないから、水面下で政治的な動きをとることも当然に許容されてよい。古田知事が、自民党の国会議員と連絡を取り合って、出馬に向けて支持固めをしていたことは不思議でも何でもない。
しかし、私にはこの動きに疑念がある。仮に古田知事に、岐阜県の行政機関のトップとして今後も県行政を担ってゆこうという強い意思があったとすれば、周囲がどう言おうと、より早期に「私は県民のために断固出馬をする」と出馬表明を行っていたはずである。
ところが、古田知事は、上記のとおり、本年10月9日に自民党の国会議員が自分を支持するという内容の覚書を作成したことを確認してから、ようやく5選出馬の意思があることを外部に発信したという事実の推移となっている。
そうすると、もともと古田知事には県行政に対する熱い意欲など存在せず、単に、これまでやってきた県知事という職業を、今後もダラダラと継続するかどうかをめぐって自分自身が迷っていたのではないか?との疑問が湧いてくる。国会議員が作成した念書を見て、ようやく重い腰をあげて「では、出馬するか」と決断したように見える。ただし、これは、古田知事自身しか知らない極秘事項であり、私の見立ては、あくまで単なる憶測にすぎない。
しかし、そのように推測する根拠はないではない。
第1に、古田知事は、来年春には知事在職4期、16年となる。16年という期間は、一般の平均的能力を備えた知事であれば、知事になる前に自分が思い描いた政策のほとんどを実行に移すことが可能な時間と見てよい。逆に言えば、16年を費やしてもできない目標は、仮に5期、20年を費やしてもできないと考えるのが合理的である。一体、古田知事は、仮に5期目を務めることができる状況になった場合に、何をしようとしたいのか?全く構想が見えていない。ただ単に、惰性で今後も知事を務めようと考えているのではないかという疑念を払拭することができないのである。
第2に、一口に知事と言っても、いろいろなタイプがあり、個々人の持って生まれた性格にも左右されると言えよう。しかし、それにしても、古田知事の記者会見の様子を見ていると、いつも不機嫌な様子の表情を浮かべ、話す言葉にも力がない。全然覇気が感じられない。一般県民から見ると、「古田知事は、知事の仕事をしていて何が楽しいのか?」という疑問すら起こってくる。ヤル気があるのかないのか、県民にはさっぱり分からないということである。
第3に、東海地方には、愛知県の大村知事、三重県の鈴木知事という二人の知事がいる。大村知事は、一時、愛知トリエンナーレを巡る舌禍により苦境に立たされたが、現在は、それを挽回しようと、コロナ禍における感染拡大阻止に向けて、毎日のようにテレビ番組に顔を出し、あの個性ある表情で対策について持論を自分の言葉で話している。事、コロナ対策に関する限り、愛知県職員が会見するという場面はテレビ報道を見る限り、極めて少ない。つまり、知事が先頭を切って精力的に働いている。また、鈴木知事も年齢が比較的若いこともあって、記者会見などで語る口調には力があり、表情からも生気があるように感じる。
一方、古田知事には、自分が先頭に立って何かを成し遂げようという気概は感じられず、たまたま見かける記者会見でも、例の暗い調子でボソボソと語るだけである。そのくせ、多額の公費をつかった外国出張は好きであるとの良くない評判も聞く。
以上のような事実(ただし、一部推測も含む)に基づいて考えた場合、古田知事が5期目を務めても何も良いことは期待できないことが分かる。にもかかわらず、自民党野田聖子議員が、古田知事を支持し、かつ、反古田の姿勢をとる県議会の一部ベテラン議員を揶揄して、「長老支配政治」と批判したことは、無責任であるとの非難を免れない。野田聖子議員に聞くが、自民党の二階幹事長の言動は、長老支配政治には当たらないのか?私は、野田聖子議員が尊敬する二階幹事長のような古い体質を持った国会議員には、一刻も早く政治の世界から足を洗って欲しいと考えている。
以上、どう考えても古田知事は支持できない。5選を認めるべきではない。早く岐阜県知事の職から退いてもらいたいものである。本当に意欲のある有能な若手の人材に、2021年以降の岐阜県政を委ねるべきである。
いずれにしても、2021年1月24日の岐阜県知事選挙は、現職である古田知事に対する岐阜県民の大きな不満が示される選挙となろう。
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