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弁護士日記

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法曹人口は適正であるべきだ

2008年11月19日

 新聞記事によれば、旧司法試験の合格者が、今月13日に発表された。旧司法試験とは、法科大学院を経て受験する新司法試験とは異なって、受験資格を得るためには必ずしも法科大学院を経ている必要はない。今年の合格者は、144人だったようである。
 そうすると、本年度の新司法試験の合格者との合計人数は、2209人となる。この数字をみて思うことは、これらの合格者のうち、十年後に、一体何割の人間が法曹として残っているか、という疑問ないし懸念である。法曹人口を激増させることが、あたかも良いことずくめであるかのような誤解ないし幻想に陥って、日弁連や法務省は、「年間合格者三千人」という実に無謀な計画を唱えて、猪突猛進してきた。
 しかし、昨年あたりから、日弁連の内部においても、このような大量生産・大量消費型の法曹養成システムに疑問を抱き、ブレーキをかける考え方が次第に勢力を増しているように思える。大量生産・大量消費型の法曹養成とは、なるべく多くの人間に法曹資格を簡単に与え、後は、自由競争にまかせて、金儲け競争に打ち勝って生活できる弁護士だけが、そのまま弁護士として残り、競争に敗れた者は、「勝手に方向転換しろ」という、弱肉強食の考え方である。
 私は、このようなアメリカ型の法曹養成システムは、完全に間違っていると考える。アメリカ型の、自由競争を際限なく推し進めることを良しとするやり方が、経済の面でも大きな誤りであったことは、今日の金融大危機をみればすぐに分かることである。
 法曹人口、なかでも弁護士人口については、まず、いろいろなデータを基に、適正な人数を推定することが一番重要である。そして、適正な人数であるか否かを考えるにあたっては、弁護士登録した人間が、ごく普通の質素な生活を送りつつ、弁護士業務を長く継続することができるか否かが大きな目安となる。筆者は、何も、有名企業ばかりを顧客として抱える東京の大手法律事務所の弁護士たちが稼いでいる莫大な年収を参考にしろ、などといっているのではない(そんなものは、地方に住む普通の大多数の弁護士には全く関係のない、別世界の話である。)。
 弁護士業は、社会に発生する法的な紛争を、法的な手続きに乗せて適法に解決し、そのことによって、結果的に社会の安定と正義を守るための職業である。そもそも営利を目的とする会社や商売人などとは違う。同業者と競争をして、ガツガツと金を稼ぐことを目的とする仕事ではない。したがって、紛争つまり法的需要に見合った数の弁護士が存在すれば、それで十分なのである。先の見通しをよく考えもせずに、法曹人口を激増させることは、将来に大きな禍根を残すものであって、間違いである。   以上

日時:11:24|この記事のページ

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