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弁護士日記

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「東大病患者」を生み出すマスメディアの愚

2022年01月19日

 最近のニュースで気になったのは、大学入学共通テストの試験会場であった東大前で、名古屋から上京した高校生が、受験生ら3人を刃物で襲ったという事件である。新聞報道によれば、この少年は、名古屋では有名な私立の進学高であるという。地元の人間であれば、おおよそ学校名は想像できる。
 その少年の犯行理由であるが、聞いておかしいと感じた点がある。少年は、「医者になるため東大を目指したが、成績不振で自信を無くし、他人を殺した上で自分も自殺しようと考えた」という趣旨の供述をしているとのことである。
 ここで、一番首をかしげる点は、将来医師になるのが本当の目的であれば、医学部を設置している大学に進学すれば十分なはずである。名古屋市を含む東海地方には医学部を設置している国公立大学や私立大学が複数存在するのであるから、自分の学力と相談して最適と思われる大学を受験すればよいのである。地元の大学医学部を卒業して、医師国家試験に受かれば医師になれる。
 東大医学部に進学しないと、他所の医学部では絶対に学べない専門分野があるというのであれば話は別であるが、単に東大というブランドにあこがれて受験をしたいという動機であれば、それは考え方が未熟である、あるいは幼すぎるというほかない。
 私はテレビは余り見ないが、たまたまテレビ番組を見たときなど、「東大王」とか「東大卒」の肩書をわざわざ付けていることがある。報道番組などでも、コメンテーターを紹介する際に、わざわざ「東京大学卒業」と表示していることがある。肩書を特に付ける意味がある場合は別であるが、そうでない場合は卒業大学など、いちいち表示する必要はないはずである。東大以外の場合は、〇〇大学卒と表示しないのが普通であるが、なぜか東大卒の場合に限って肩書を付しているのは、どう考えてもおかしい。このような行動は、東大卒業生を必要以上に褒めたたえ、過大評価し、また持ち上げ、何か特別の有難い存在としてあがめようという間違った心理から来ているものであろう。実に下らない考え方であり、また風潮でもある。
 昔、自分が大学受験生であった当時、受験雑誌などで「東大病患者」という言葉を知った。その意味は、「東大以外は大学ではない」という極端な排他的差別思想に取りつかれた受験生を指すようであった。そのような偏向した思想は、未だマスメディアを中心に広く蔓延しているようである。例えば、某男性ニュースキャスターは、過去に自分が東大野球部員であったことをウリにしていた時期がある(最近の様子は知らないが)。昔、野球部にいたことがあるかどうかという事は懐古趣味にすぎず、どうでもよいことなのである。
 東大に入学したといっても、多くの場合は、子供の頃から受験に役立つ塾に通い、受験テクニックで頭デッカチになった末にようやく何とか合格したということに過ぎず、こんな人為的作業は全く評価に値しない。そのような不自然な過程を経て獲得した高偏差値(机上のペーパーテストで高得点を得る能力)など、全く自慢できることではない。
 そろそろ、マスメディアは、このような馬鹿げた風潮とは手を切るべきである。どこの大学を卒業していようと、世の中の評価は、仕事で成果を出しているか否かで決まるのである。特に在野の仕事である弁護士の場合、問われるのは実務的な能力(あるいは法律に関する知識)の有無だけであり、どこの大学の出身であるかは、そもそも最初から問題にもならない。
 東大卒業生を特別扱いする考え方は、そろそろ止めた方が良い。

日時:18:30|この記事のページ

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