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弁護士日記

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空き地が年々増加する岐阜市中心部の惨状

2023年03月25日

 今月の22日に、全国の公示地価が公表された。新聞報道によれば、全国の地価は、コロナが終息してようやく下げ止まりの兆候が出ているとのことであった。
 しかし、記事をつぶさに読む限り、そのような楽観的な印象を持つことはできない。令和5年3月23日付けの岐阜新聞14面には、岐阜県内の公示地価が、住宅地、商業地および工業地の3つに分けて調査結果の概要が示されていた。それによれば、住宅地については、昨年と比較して上昇が55地点となっているのに対し、下落は159地点となっている。下落した地点の方が多い。
 また、ネット記事であるが、岐阜県内の公示地価が一番高かったのは、1990年(平成2年)から1993年(平成5年)にかけての時期であった。当時は、地価が高騰し、平均坪単価が120万円を超えていた(なお、1992年は坪単価167万円)。ところが、令和5年の1月1日時点では平均坪単価は26万円台である。昔、バブルの時代には「地価は絶対に下がらない」という神話があったが、今回、歴史(統計数値)を見る限り、そのような神話は、真っ赤な嘘であったことが分かる。
 このように、統計数値を見る限り、大勢としては、未だに地価下落の趨勢が継続していると考えるのが相当である。
 さて、本稿では岐阜市の住宅地に絞って現状を分析する。岐阜県内の住宅地で一番地価が高いのは言うまでもなく岐阜市内の住宅地である。上記の岐阜新聞の記事では、住宅地で価格が上位にある地点を10か所選び、地名も具体的に表示されている。一番高いのは、岐阜市金町6-17-1である。ここは平米単価が31万6000円となっている。当然の価格であろう。付近では超高層の豪華なマンションが今年春に建設されたこともあり、まさに岐阜市の中心地と言えるからである。
 2番目は、岐阜市加納本町3丁目であり、平米17万4000円となっている。ここは、JR岐阜駅から数百メートル(徒歩数分以内)の絶好の位置にあり、名古屋への通勤に極めて便利である。3番目は、岐阜市加納永井町1丁目であり、平米13万5000円となっている。ここもJR岐阜駅から500メートル以内の至近距離にあり、名古屋方面への通勤が楽である。
 岐阜市内には誰でも知っている有名な企業がほとんどなく、愛知県の名古屋に通勤する会社員が少なくない。大学や専門学校も同様である。岐阜大学で学ぶ若者は人数だけで言えば少数派であり、大半が名古屋市内にある大学(名古屋大学、南山大学、中京大学、名城大学、愛知大学等)で学ぶ。岐阜大学には、法学部・経済学部・文学部などの文系の学部が一切なく魅力に乏しい(ただし、これは個人的感想である)。
 このように、通勤・通学に便利なJRの主要駅に近いということが、土地の価格に大きく影響しているとみて間違いないであろう。他方、JR岐阜駅から1キロメートル以上離れると、通勤のための時間が余分にかかることになるため、平米11万円台以下にまで低下してくる。
 例えば、JR岐阜駅から北東方向に直線距離で8㎞以上も離れた岐阜市三田洞東3丁目は、かつて「三田洞団地」として脚光を浴びた時代もあったが、公共交通機関としてはバスしかなく不便であるため地価が下落傾向にあり、今年の公示地価は平米2万8700円となっている。
 もちろん、主要駅からの距離だけで価格が決まるわけではなく、周辺の立地環境や公共施設の充実度なども大きく影響するであろう。例えば、周辺に治安の良くない歓楽街があったり、殺風景な新興住宅街に立地する土地であったりすれば、住環境が悪いためマイナス要素となると思われる。付近に騒音、悪臭、粉塵等を出す迷惑施設が存在する場合も同様であろう。
 また、書店に並んでいる不動産関係の書籍を読めば分かることであるが、同じ住宅用の土地であっても土地の形状が悪い土地の場合は、購入しても使い勝手が悪くなるため(効率的利用ができないため)、長方形に近い土地と比べて割安になる。また、一戸建ての住宅の建設を予定する場合、最低でも1台分の駐車スペースが必要となる。できれば2台分スペースが欲しいものである。したがって、余りにも狭小な土地は、タダでも要らないということになる(想像以上に、買い手を見つけるのに難儀するという話を聞く)。
 近年感じることであるが、私が住む岐阜市中心部は、最近になってますます露天駐車場が増えてきた。原因は、老朽化した家が取り壊されて空き地になるためである。多くの地主は、空き地を露天の有料駐車場にしようと目論んでいるようであるが、現実は厳しい。たまたま近所に多くの人間が雇用される事業所、オフィス、医療機関等があり、そこが一括して借りてくれれば一番良いのであるが、そのような場所は、ごく一部の地域に限定される。
 大半の駐車場は、ほとんど誰も借りる者がおらず、閑古鳥が鳴くような寂しい光景を生じさせている。ここで、「家を新築して、そこに自分や家族が住むなり、あるいはアパートを建てて他人に貸せばよいではないか」という反論があろう。しかし、数千万円の費用をかけて家を新築しても、末永く住む者がいなければ、あるいは住む必要がなければ、全く無駄な支出となる。また、アパートを建てて儲けようとしても、入居者が埋まらないと赤字となってしまい、逆に大損をすることになる。アパートを借りるのは比較的若い年齢層が多いので、地元で若年層を増やすには、岐阜で育ち、東海地方の大学を卒業した若者を、就職時に東京に本社がある大企業や官庁に奪われないようにすることが一番の肝となる。
 ところが、岐阜市の中心部は、主要道の周辺部を除き、一歩脇道に入ると古い建物ばかりが多く並んでいる。今後、耐用年数を超えて建物老朽化が一段と深刻化し、それを処理(解決)するために空き地にした結果、誰も有効利用しない余った土地があふれる時代を迎えるのではないかと予測する。この現象は何も岐阜市に限って発生しているものとは言い難いのではなかろうか。
 それを阻止するには、東京に富も人材も全部が集中するというおかしな現状(東京一極集中)を是正する方策を考える以外にない。大都市ではない地方の中規模都市(人口20万人~60万人程度)が繁栄するような政策を立案し、かつ実行する必要がある。国の責任は非常に重いというほかない。

日時:21:53|この記事のページ

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