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弁護士日記

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意味不明瞭の新聞紙コラム

2024年02月14日

 本日付け(2024年2月14日付け)の地元新聞のコラム(分水嶺)を読んだ。そこに書かれていたのは、フランスの元法相を引き合いに出して、いろいろと文章を連ね、文章の最後に「死刑存廃の議論が停滞するさまを、海の向こうからどう見ているのか」という結論であった。奥歯に物が挟まったようなキレのない文章である。大学入試の現代文の問題に置き換えれば、「(問)筆者は、何を言いたいのか、100字以内で、理由とともに結論を書きなさい。」といった出題に近い。
 私の解答は、「このコラムを書いている人物は、死刑制度に反対の立場をとっている。その理由は、この元法相が92年に来日した際の目的および発言内容から明らかである」というものである。
 死刑制度は、前にも述べたとおり、既に日本の司法機関である最高裁判所が合憲という判決を下しており、また、時々、日本各地の地裁でも死刑判決が現に言い渡されているのであるから、実務的な運用としても完全に定着している。また、日本人の概ね80%以上は死刑制度を支持している。さらに、立法機関である国会においても、ここ数十年余り、死刑制度の是非について議論になったことすらない。行政機関である内閣においても、死刑制度について何か見直しをするという話が出たことは、私が知る限りない。
 このように、日本社会において完全に定着している法制度(法文化)について、分水嶺を書いている人物は少なからぬ不満を持っているようである(本日付けのコラムの内容を合理的に解読する限り、そのように解するほかない)。一体、この人物は、なぜそのような意見を新聞の1面に掲載しようと考えるのか?
 本気で、議論を巻き起こそうとするのであれば、一方的な立場の意見を掲載するのではなく、賛否両論の立場から、しかるべき専門家を4名程度招いて(賛成派2名+反対派2名の計4名である)、紙上で徹底討論させればよい。いずれの立場がより説得力を持つかは、新聞の購読者の判定に委ねるのである。私見は、あらためて述べるまでもない。死刑制度は、必要不可欠の有用な制度であり、堅持する必要があるという立場である。
 それにしても、上記コラムの中で気になった文章がある。それは、フランスの元法相が述べたという「『民主主義は世論に追従することではない』と政治家の責任を説いたという」箇所である。
 しかし、この意見には異論がある。第1、ここでいう民主主義の定義が不明である。コラムを書いている人物は、一体「民主主義」の定義をどう理解しているのか。他人の発言を肯定的に引用する際は、その前提として、自分自身において、その意味を理解ないし説明できることが必要となる。第2に、仮に世論つまり民意に逆らってでも、国会は自分が正しいと考える法案を自由に決議できるいうことになったら、場合によっては、国民生活に大混乱をもたらすことにもなりかねない。しかし、そのような事態は、果たして民主主義または国民主権に適合するといえるのか、疑問がある。
 いずれにしても、自分の意見を公開するに当たって他人の発言内容または他人が書いた本の内容を引用する場合は、その内容を自分で理解した上で公開する必要があろう。この点は、お互いに十分留意したいものである。
 

日時:12:16|この記事のページ

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