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弁護士日記

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依頼者と弁護士の役割分担について

2016年09月23日

 一般人が事件・事故・各種トラブルに巻き込まれた場合に、真っ先に相談すべき相手が弁護士であることは、今日では言うまでもないことであろう。昔は、弁護士の数が少なかったため、困り事が発生しても、弁護士に相談する機会すらなく、やむなく地元の有力者などに相談していたことが多かったという。しかし、地元の有力者が法律の専門家であることはほとんどないのであるから、いきおい、相談に対する回答も法的には間違ったものであった可能性が高かったと推測される。そのため、本当は勝つべき側に対しても、喧嘩両成敗の結果が押し付けられることも多かったのではないだろうか。
 また、トラブルで困っている人が、知人の伝を頼って、正体不明の「事件屋」に対しトラブルの処理を依頼した結果、騙されて法外なお金を事件屋に巻き上げられることもしばしばあったようである。
 今日では、日本全国に数多くの弁護士が存在する状況となっているため、法的なトラブルで困っている人々は、弁護士に相談して、解決の道筋を見つけることが容易となった。
 弁護士に対し事件の処理を依頼する人が多くなり、また、ネットなどを通じて法的な知識を容易に得ることが可能となった今日、依頼者と弁護士の役割分担について考えることが重要である。
 事件について一番事実を知っているのは、いうまでもなく依頼者である。他方、当該事件の事実関係についてどのような法的な解決が可能か、訴訟の場でどのように主張をしたら良いのか、を考え出すのは弁護士の役目である。
 双方の関係を料理に例えた場合、料理の材料(肉、魚、野菜等)を提供するのは依頼者である。弁護士は、依頼者から提供された材料をうまく調理して料理として完成させる。その料理を食べて、原告または被告のいずれの料理がうまいかを判断するのは裁判官である。裁判官は、よりうまい料理を完成させた方に勝訴判決を言い渡すという具合である。
 ここで、ときどき困った依頼者が出現するおそれがある。当事務所では幸いにしてなかったが、依頼者の方が、弁護士に対し、訴訟の争い方について注文を付けてくるという事態が十分に想定されるからである。依頼者としては、自分自身のことで事件になっているのであるから、必死である気持ちは理解できる。しかし、訴訟の具体的な争い方にまで口を差し挟まれては、代理人である弁護士にとって非常にやりにくい状況となって、迷惑なことも十分にあり得る。
 依頼者は、あくまで材料の提供者に留まり、その材料を生かして美味しい料理を作るのは弁護士の腕の見せ所である。例えば、依頼者から、「肉の焼き方が良くない。このように焼いた方が良い」などと言われても、ありがた迷惑だけであろう。依頼者が、生半可な知識を基に、いろいろと言ってきてもらっては困るということである(後日、依頼者にとって悪い結果が出る。)。
 もちろん、訴訟の具体的な方法について、依頼者と代理人である弁護士が、協議を重ねて訴訟方針を統一するということ自体は、好ましいことである。いけないのは、依頼者の間違った思い込みによる固執である。
 なお、出来上がった料理を食べて、より旨い料理を作った方に軍配を上げるのは裁判官の役目であると言った。ここで、裁判官が「味音痴」で、的確な判断を下せなかった場合は、結果的に間違った判決が下されることになる。このようなことは、決してあってはならない。裁判官は、日頃からいろいろな料理を幅広く食べることによって、自分の味覚を常に研ぎ澄ましておく必要があろう。
      

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