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弁護士日記

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日弁連理事会の議論の内容に異論あり

2018年05月17日

 本年5月16日付けで、日弁連速報がファックスで送信されてきた。
 内容を読むと、2018年第2回理事会報告とある。理事会では、いろいろな議案が審議されたようである。
 その中で、私の注目をひいた記事とは、「憲法9条の改正議論に対し、立憲主義を堅持し、恒久平和主義の尊重を求める立場から課題ないしは問題を提起するとともに、憲法改正手続法の見直しを求める決議案」であった。
 記事をさらに読むと、現在、自民党が提案する、憲法9条1項・2項をそのまま残しつつ新たに憲法9条の2を設け、必要な自衛の措置をとることを妨げず、また、自衛隊を憲法に明記することに対する異議を唱えるものであることが分かった。
 まず、「必要な自衛の措置」について、理事会は、仮にそのような条文を明記すると、「憲法9条が果たしてきた憲法規範としての機能が減退ないしは喪失し、日本国憲法の恒久平和主義の内実に変化を生じさせるおそれがある」との見解を示している。
 しかし、これはおかしい。国家というものは、別に憲法に明文の規定を置こうと置かないとにかかわらず、自衛権が存在することが認められているからである(通説)。したがって、国家が、自衛権発動のために必要な措置をとることができることは、当たり前のことにすぎない。今回の自民党案も、ごく当たり前のことを目指しているにすぎず、なにゆえ、条文を明記すると憲法規範としての機能が弱体化するのか、全く理由になっていない。したがって、理事会の立場とは、一部の野党の立場を代弁しているものと理解する以外になく、相当性を欠く。
 冷静になって考えてみれば分かるが、恒久平和主義を実現するためには、我が国だけが、ガラパゴス化して、他の国家との関わりを断つことで実現するものではない。
 世界は、統一した権力を持たない、いわば熱帯ジャングルのような弱肉強食の状況にあるのであるから、我が国としては、世界情勢の変化を総合的に把握し、最も効果的な対策を常に考える必要がある。日本だけが、思考停止状態に陥り、いわば「引きこもり」状態を継続することで平和が実現するのではない。その大切なことが、いわゆる改憲反対野党の議員には全く分かっていない。
 次に、理事会は、「必要な自衛の措置」の内容についても、「武力行使の限界を憲法に定めず、自衛隊の行動に対する国会の承認その他の統制が法律に委任されているため、自衛隊の行動に対する実効性のある統制を実現することに疑義が生じ、立憲主義に違背するおそれがある」との見解を示す。
 しかし、これもおかしい。第一、必要な自衛の措置を憲法に具体的に記載することは、実現不可能の空論に近いことがあげられる。「必要な自衛の措置」とは、文字どおり必要な措置であり、仮に憲法に明記するとなると、非常に抽象的・概括的な文言とならざるを得ないであろう。つまり、具体的には書けないのである。
 また、いったん憲法に明記した後に、現実に照らして不都合な点が生じた場合、再度、憲法改正を行う必要があり、非常に大きな手間がかかる。もし法律に明記した場合、その後、不都合な点が発見された場合であっても、国会の両院が改正案を可決することで、迅速に対応できる。
 さらに、仮に憲法に明記した場合、日本を良く思わない国によって利用される危険がある。具体的には、中国、韓国、又は北朝鮮から、「日本国は、改正憲法9条の2を守れ」という間違った非難が生じ、政治的に利用される恐れがある(彼らの意図は、日本国を弱体化することにある。)。
 以上、日弁連は、いたずらに政治問題に介入をすることを止め、もっと切実な問題(例 若手弁護士の生活維持の問題など)の解決に力を注ぐべきであると考える。

日時:15:05|この記事のページ

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