当事務所では過払金返還請求事件も取り扱っている。過払金返還請求事件は、今から5から6年前が事件数としてはピークだったように思う。現在では、当事務所だけでなく、他の法律事務所においてもその数は激減しているようである。
昨年10月、Aさんから過払金返還請求事件の依頼があった。Aさんから持ち込まれたサラ金業者は全部で5社であった。そのうちの一つが、C社である。C社とは過去に訴訟を何回もやったことがある相手である。
今回、C社に対し、Aさんの過去の取引履歴の開示を求めたところ、総額で267万円ほどの過払金があることが分かった。
そして、昨年11月になってC社の担当者T氏から電話があった。T氏の言い分は、AさんとC社との取引については、途中で、取引が分断されている。取引は2つに分かれる。今から10年以上前に、古い方の取引はいったん終了しているから、現在では消滅時効にかかっている。したがって、古い方の取引から発生した過払金は返還できないという言い分であった。したがって、分断後の新しい取引から発生した過払金89万円での和解案を提示するというものであった。
このC社の提案に対し、私は、即座に断る旨の返事を行った。いつもの方針どおり、強気の姿勢を維持した。また、私からT氏に対し訴訟を提起して解決すると伝えた。そして、Aさんは、昨年の11月、名古屋地方裁判所に、267万円の支払いを求めて提訴した。
すると、年が明けた本年1月17日になって、いきなりC社の方から、FAXが来た。とりあえず50万円を振り込むというのである(また、実際に50万円の振込があった。)。おそらく、裁判で負けた場合に、支払うべき利息がかさむため、利息の支払いを少しでも軽減する意図で、50万円を先に自主的に振り込んで来たのであろうと思った。
さて、裁判は今年の1月18日から、名古屋地方裁判所で始まった。原告であるAさんと被告であるC社の言い分が、それぞれ出た。C社から出た準備書面つまり、C社の主張が書かれた書面を見ると、本件は、古い方の取引と新しい方の取引が、分断され別個のものであるという主張が展開され、C社の言い分を認めた他の訴訟事件の判例も証拠として添えられていた。
しかし、私は、本件にあってはそのような理屈は成り立たないと考え、いろいろと工夫して準備書面を作成し、被告であるC社と裁判所に対して提出した。
第2回裁判の期日である本年2月19日、被告であるC社の支配人のY氏が出廷した。この日、裁判官から和解案が提示された。C社は、既払金である50万円のほか、新たに150万円を支払うという内容であった。つまり、合計で200万円を、本年3月22日までに支払ってはどうか?という内容の和解案であった。
原告であるAさんの過払金返還請求権は267万円であるが、それを200万円に軽減するという案であった。C社の支配人であるY氏も、「早く和解で決着させたい」と望んでおり、また、判決になった場合に、原告であるAさんの言い分が必ず100パーセント認められる保証もないことから、私としても、その和解案を即時受諾した。その結果、2月19日に和解が成立し、事件は、裁判開始から1か月で終了した。
仮に、昨年11月にC社の提案を認めていたら、結果的に、111万円を損したことになる。果たして勝てる事件なのか、あるいは負け筋の事件なのか、その見極めが重要だということである。
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