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弁護士日記

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帝国データバンク情報部著「倒産の前兆」を読んで

2020年01月21日

 年末年始に私が読んだ本のうち、今回、帝国データバンクの手による「倒産の前兆」を紹介する。この本の副題は「30社の悲劇に学ぶ失敗の法則」である。倒産する原因にはいろいろなものがあろことは間違いないが、しかし、共通する点もあるはずであり、この点を弁護士も「常識」として心得ておく必要があろう。
 この本は、さらに「破綻の公式」として7つの類型をあげる。その中で、私が気になったのは、「業界構造、市況変化の波を打破できない」という章と、「旧来型ビジネスモデルにしがみつく老舗は潰れる」という章であった。
 会社が倒産する原因として、われわれ経営の素人でもすぐに頭に浮かぶのが、前者の場合である。これは、簡単に言えば、時代の流れを掴んでいない会社は衰退するということである。
 実例として、わが国では少子高齢化が進展している。まず、少子であるが、文字通り、生まれる子供の数が年々減っているということである。つまり、若年者を相手にしたビジネスは、ここしばらくは需要が上向かないということである。例えば、昔は、小さな学習塾が多く存在していたが、10年以上も前から、中小の学習塾は淘汰され、大手の予備校が経営する学習塾のみが生き残っている。
 また、高齢化と人口の減少を背景にして、昔からあった街の商店街は、どこもさびれてしまい、多くの店のシャッターが下りるようになってから久しい。その代わり、郊外には広い駐車場を完備した大型スーパーなどが多く出現して、多数の客を呼ぶようになっている。
 弁護士の世界でも、昔のように5年間も6年間も浪人をして、ようやく司法試験の難関をパスして弁護士になるという時代はとうの昔に過ぎ去り、今や、弁護士の人気はがた落ちである。試験の難易度も低下し、現在では、人並以上の能力と強い熱意があれば、司法試験には無事合格できるはずである。
 弁護士人気が落ちた原因は、簡単に言えば、ひと昔前のように、弁護士になって仕事をすれば、30代から40代で、自宅(持ち家)が建てられるという夢のような時代ではなくなったことが原因である。つまり、昔のように稼げないということである(現在は、おおよそ昔の半額の年収額にまで落ち込んでいる)。なぜ、稼げなくなったのかと言えば、弁護士人口ばかり大幅に増えたにもかかわらず、これに逆行するように、依頼者となるはずの人口が減少したことに尽きる。つまり、弁護士一人当たりの依頼者の数が減少したということである。
 このように、司法試験に受かって弁護士業に就いても、仕事がハードな割に収入が少なく、また、収入も不安定である。弁護士業界の不況は、上記のような構造的な要因から来ているので、将来、すぐに好転するとは考え難い。
 弁護士会内部でも、このような状況に迅速に対処する必要があるという声もあがっているようであるが、有効な対策を得ることは容易ではないであろう。この場合、限られた国家予算をいかに司法の分野に多く配分してもらえるようにするかという点が重要となる。しかし、昨今の弁護士の日々の活動を見ている国民の目は厳しい。
 その典型例が、死刑制度に対する方針である。日弁連の会長選挙に立候補する候補者のうち、死刑制度に賛成する人物は、確か一人もいなかったと記憶する。国民の8割が死刑制度に賛成している状況下において、この有様は、いかに弁護士の感覚が国民の声とズレているかの一例である。
 したがって、年収額などには最初からあまり関心がなく、国民の権利擁護に情熱をそそぐことさえできれば十分であるという高邁な考え方を持った人格者は別として、今後弁護士を志す若者は、場合によっては、厳しく長い人生が待っていることを覚悟しておいた方が良いであろう。
 

日時:22:17|この記事のページ

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