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弁護士日記

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髙中正彦ほか著「弁護士の失敗学」を読んで

2022年03月01日

 久しぶりに事務所の本棚に並んでいた「弁護士の失敗学」(ぎょうせい)を読んだ。この本は、2014年7月1日に発売された本であり、当時、私は興味があってこの本を購入し、読んだことがあった。なぜ読んだかといえば、今から20年以上も前の古い話であるが、当時、一見の客から受任した不動産がらみの事件の処理をめぐってやや難儀した経験があり、それ以降、依頼があっても、果たして受任してよい依頼者か否かを厳格に峻別するようにしていたからである。私のポリシーは、今も昔も、できる限り迅速に対応するということであるが、それでも対応が難しい人物が現にいるものである。
 さて、上記の本には、われわれ弁護士が留意すべき知恵がいろいろと書かれている。ここで少しばかり紹介をさせていただく。
 本の78頁には「依頼者の開拓と選別」という項目がある。依頼者が依頼者を呼ぶという法則が書かれている。これは大方の弁護士であれば肯定できる点であろう。依頼された事件を誠心誠意処理すれば、その依頼者の信頼を得ることができ、その依頼者が、別の依頼者となるべき人物を紹介してくれるという好循環である。
 ただ、本の79頁には「依頼層はその弁護士の人格の鏡である」という法則も書かれている。全くそのとおりである。「スジの悪い事件は、スジの悪い弁護士に自ずと集まってくる」ものであり、「不祥事を起こす弁護士の依頼者層を見ていると、この指摘は正鵠を得ている」という指摘には完全に同意できる。おかしな弁護士には、おかしな依頼者が集まってくるものである。
 ここで、この本は、「気をつけるべき依頼者」という項目を掲げる(80頁)。われわれ弁護士が警戒をしなければならない依頼者のパターンが掲げられている。例えば、次のような依頼者は警戒を決して緩めてはならない。
 第1に、嘘をいう依頼者である。人間誰しも自分を良く見せようとして、あるいは人間関係を維持するために多少の嘘(事実でないこと)を話すものである。例えば、太っていることを気にしている人物に対し、「あなたは太っていますね」などと言ったら、言われた相手は、たとえそれが真実であっても、気分を害することは必定であり、言ってはならないというのが、大人(社会)の常識である。
 この本のいう「嘘つき」とは、悪意あるいは害意に満ちた嘘であり、例えば、偽造した書面を本当の書面であると偽って「これが本物の契約書です」などと言って平然と弁護士に提出するような場合をいう(同頁)。これは弁護士を騙すということである。弁護士としては、このような嘘をつかれ、後になって真っ赤な嘘であることが判明した場合、その不利益は弁護士自身にも跳ね返ってくる。弁護士としての信用を失うということである。
 第2に、狡猾な依頼者である。狡猾な依頼者とは、分かりやすく言えば、裏表がある依頼者ということである。本には、弁護士の前では「先生、先生」と敬意を払うような言動をしつつ、裏では、「あの弁護士の奴め」などと自分が依頼した弁護士を貶める発言を平気で行うような人物の場合が掲げられている。
 第3に、無理難題をいう依頼者である。この本では、例えば、「白を黒といいくるめてくれ」と弁護士に頼む依頼者の例が掲げられている。この手の依頼者は、しばしば「弁護士を雇う」という発言をする。要するに、金で雇ってやったのだから、ありがたく自分の言う事を聞けという態度である。しかし、依頼者と弁護士の関係は委任契約であり、弁護士は、依頼者の注文を一から十まで聞く義務はない。無理なことを言ってくる場合は、「それはできません」とはっきり断る必要がある。この手の依頼者は、信頼関係が切れて弁護士が自発的に辞任した場合に、辞任したことにクレーム(言いがかり)をつけてくることがあるので、要注意である(81頁)。
 第4に、弁護士任せの依頼者である。弁護士は、事件を処理している段階で、依頼者から「先生にお任せします」などと言われることがある。しかし、その発言を真に受けてはならない。後になってから、「そんなことは言っていない」と開き直ることがあるので、絶対に信じてはいけない。要所要所では、必ず「このように進めるが、これでいいですか」と本意を確かめる必要がある。私も、例えば、和解をするような場合、「この賠償金額で和解していいですか」と手紙を出し、書面で回答を得るという方法を必ず取っていた。口頭の了解だけでは、非常に危険である。
 この本では、単に特定の依頼者だけに警戒を払うよう呼びかけるのではなく、相手方の弁護士についても、警戒すべき弁護士の特徴を掲げている。ここでは、見出しだけを示す。➀嘘をつく弁護士、➁自分の主張のみをする弁護士、➂時間にだらしない弁護士、➃格好の良いことだけをいう弁護士・カネに汚い弁護士・不誠実な弁護士である。私も実のところ、「弁護士」という肩書だけでは相手を全く信用しないようにしている。弁護士でも信用できないダメな者は、残念ながら確実にいるのである。
 

日時:18:53|この記事のページ

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