052-211-3639

お問い合わせ電話番号
受付時間:午前10時~午後5時

電話でのお問い合わせ

弁護士日記

弁護士日記

日高義樹著「日本の『非核』神話の崩壊」を読んで(上)

2019年08月20日

 今年の8月に読んだ本の中で、今回、日高義樹著「日本の『非核』神話の崩壊」(海竜社)を取り上げる。この本の著者である日高氏は、1935年、名古屋市生まれである。御年84歳の辺りであろうか。日高氏は、NHKの報道記者を経て、退職後は、米国において「ハドソン研究所」などの著名なシンクタンクにおいて精力的に活躍した人物である。私も一目置く人物である。最近のテレビ番組に出ているようなレベルの低いコメンテーターが、10人束になってかかっても、到底及ばない優れた見識を持っている。
 さて、この本を読んで、認識を新たにした数々の論点がある。一回で全部を紹介することは難しいので、二回に分けて紹介したい。今回は、前半部分である。
 氏は、この本の中で6章に分けて分かりやすく説く。今回は、第1章を取り上げる。
 第1章「日本列島を襲う中国の核ミサイル」において、氏は、今後、中国が日本に対し核攻撃を行う場合、どのようなものとなるかについて予想する。
 氏は、「中国の日本に対する核攻撃は、直接日本本土を攻撃するのではなく、日本の上空1万メートルで核爆発を起こすというものだ。」と推測する(16頁)。核爆発によって電磁波を発生させ、日本の通信体制を一挙に破壊することを狙う。
 現代社会においては、全国的規模で目に見えぬ通信網が張り巡らされており、いったん通信が途絶すると、何にもできなくなる。ときどき、首都圏の変電所が1か所故障を起こし、山の手線の運行が全面ストップに陥るというニュースを聞く。
 核爆発による電磁波は、そのような生易しいものではない。電磁波によって通信機能が破壊されることによって、電話、テレビ、ラジオ、ATM、官公庁の業務、銀行業務、民間工場の操業、交通・運輸など全部が止まってしまう。コンピューターは全部止まってしまうのである。そうすると、自衛隊の戦闘機の発着も障害されて、一機も飛べなくなる。しかし、地上の人間が死んだり、設備が物理的に破壊されることはない。無傷のまま残る。
 このような状況を作っておいてから、中国軍は、日本の領土である尖閣諸島、石垣島、対馬、壱岐などを占領し、圧力を日本にかける(27頁)。
 このような事態が発生すれば、日本全体が有史以来の大混乱に陥る。では、中国の習近平がそのようなことを実行に移す時期と、その目的は何かという点が問題となるが、氏は、中国が経済的にも政治的にも追い詰められたときであるとみる(17頁)。また、目的は、日本をアメリカから引き離し、経済圏を奪うことであるという(同頁)。
 確かに、戦争というものは、国内政治がうまくいかなくなった時に起こる確率が高いといえる。困難な現状を打開し、他国の持つ資源を奪おうという目的で行われることが多い。中国は、しょせんアメリカの敵ではなく、いずれは、共産党の一党独裁体制が危機を迎えるであろう。その時が一番危ない。
 ここで、そのような中国による日本侵略が発生した場合、日米安保条約に基づいて、アメリカ軍が反撃をしてくれるのではないのかという疑問ないし反論が湧く。
 しかし、アメリカが、中国に対し日本防衛のための戦争を始めようとする場合、トランプ大統領の一存でできるわけではなく、アメリカ議会の承認が必要となる。
 その場合、果たしてアメリカ議会はすんなりと承認をするだろうか?私の見方は、承認が否決されることは十分にあり得るし、仮に承認を取り付けることができたとしても、遅きに失するという可能性が高い。
 どういうことかといえば、中国による核先制攻撃によって、日本が大混乱に陥った場合、内閣は総辞職に追い込まれ、次の首相を誰にするかが問題となる。その場合、中国は、日本に対し、あらゆる世論工作をしかけ、中国寄りの人物を首相に指名するほかないという世論を作り上げる(29頁)。そして、中国の意のままになる傀儡的な人物が首相に就任し、アメリカとの安全保障条約を一方的に破棄し、中国との連携を宣言する。しかし、そうなってからは、打つ手がなくなる。
 こうなっては、香港の例を思い出すまでもなく、日本は、中国の支配下に置かれた途端、自由も人権も何もない暗黒国家になってしまうのである。中国共産党に反対する日本人は、中国本土に移送され、強制収容所に隔離され、「中国共産党万歳」という考え方を徹底的に教育される。まさに、「生き地獄」が生じるのである。
 氏は、このようなことが起こらないようにするため、「我が国の安全を保つためには、中国の基本戦略である核による攻撃を、日本の力で阻止する必要がある。そのためには、日本は中国の核攻撃に対抗し中国を押さえつける核の抑止体制を持たなくてはならない」と述べる(29頁)。
 そして、「核抑止力体制には、『核に対しては核を』という基本原則がある。つまり核ミサイルによって中国のミサイル基地を攻撃する体制を作らなければならない」と力説する(30頁)。私も基本的に氏の考え方に賛同する。
 核のない世界は、確かに理想である。全世界の指導者がこれに賛成するのであれば、これ以上の良いことはない。しかし、それはまさに夢物語にすぎない。現実性が全くない。
 ここで、「核兵器は使えない」兵器ではないのか、という反論があろう。
 しかし、現にアメリカは、太平洋戦争の当時、ほぼ負けが決まっていた日本の広島と長崎に対し、あえて原子爆弾を投下している。原爆投下を決定したアメリカのトルーマン大統領は、鬼でもなければ蛇でもない。ルーズベルト大統領の急死に伴って、大統領に選出された政治家である。
 原子爆弾を投下した理由については諸説あり、原爆の威力を人体実験したものであるという説、ここで日本を徹底的に攻撃しておかないと復讐が怖いという説、戦争を早く終わらせるためであるという説(アメリカ人の多数の考え方)などがある。
 この点に関し、氏は、「日本では、核兵器は使えない兵器であるという思い込みが支配的である」と指摘する(32頁)。私も同感である。現実を直視すれば、アメリカ、ロシア、中国、英国、フランス、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮などの国が、核兵器を保有し、さらにこれを増強しようとしている。
 将来、日本が、核保有国による核先制攻撃を未然に防ごうとした場合、対抗手段として、相手国を核兵器で反撃することができる防衛体制を整えておく必要がある。必要最小限の核兵器による防衛体制を整備しておくことが、すなわち日本の安全つまり平和国家としての存続を確保できる有用な手段であると考える。

日時:14:32|この記事のページ

ページの先頭へ

Copyright (c) 宮﨑直己法律事務所.All Rights Reserved.