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弁護士日記

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全国農業新聞の記事に疑義あり

2019年04月19日

 私は、長年にわたって全国農業新聞を購読している。
 毎週、いろいろな記事があり、毎回楽しみにしている。
 ところが、最近になって一つの問題が生じている。それは、新聞の中に「農地の法律相談」というコーナーがあるが、解説内容に疑義があるからである。例えば、2019年3月1日号では、農用地利用集積計画の貸借期間が終了後、事実上の貸借関係が継続している場合を取り上げ、民法619条の「黙示の更新」の適用があるとの見解を載せている。
 しかし、農地以外の土地であれば、確かにそのような解釈が成り立つであろうが、事、農地の場合は、一般論が通用しないと考えられるのである。
 例えば、農地について、貸し手と借り手が、事実上の貸借契約を結び、賃料の授受があったとしても、そのことから、正当な耕作権が発生することはない。いわゆる「ヤミ小作」関係が発生するにすぎないのである。これまでに確立している農水省の法解釈に従う限り、「農用地利用集積計画の貸借期間が満了するということは、それまで存在した賃借権が完全に消滅する」ということである。そうすると、無から有は生じないということにならざるを得ないのである。
 私は、2019年3月11日、この点について全国農業新聞の方に質問書を出したが、全く回答がないため、同年4月5日、電話して尋ねた。新聞の担当者であるI氏が応対された。I氏は「農水省に聞いてみます」と言われた。
 後日、4月15日にI氏から電話があり、「農水省は問題ないとの答えでした」との説明があった。
 しかし、このようなI氏の対応は、ほとんど無意味であると感じた。理由は、大きく二点ある。
 第一点は、問題になった新聞記事には、一体誰が執筆しているかが明記されていないということ。名無しの権平が書いている。しかし、少なくとも、法律相談の記事であるから、回答者を明示する必要がある。法律問題に対する回答は、紙面を通じて間接的に国民の権利義務に影響を与えかねない重要事実であるから、誰が回答しているのかを明記するのが筋というものであろう。無記名の記事では無責任すぎる。
 第二点は、農水省の役人に聞いても無駄だということである。農水省の役人は行政官であり、政策の立案や法案の作成には長けているが、民法の解釈に関する限り素人にすぎない。資格試験である司法試験をパスしていない人間の回答はあまり信用できないということである。
 まして、自分の先輩が過去に表示した法解釈について、後輩に当たる職員が、あからさまに先輩の意見を否定することなど最初から期待できないということである。一般論として考えても、自己保身を大切にする官僚が、自ら窮地に立つような余分の行動をとるはずがないのである。
 私としては、「全国農業新聞よ、しっかりせい」と言いたい。

日時:17:26|この記事のページ

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