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弁護士日記

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園児の置き去り事故を防げ

2022年09月07日

 静岡県牧之原市で、3歳の園児が送迎バスに取り残され、熱中症で死亡するという惨事が起きた。何とも痛まし事故である。正確には、刑事事件である。事件の詳細は、テレビや新聞で詳しく報道されているので、ここでは触れない。私なりに感じたことを手短に述べる。
 昨年も福岡県で同様の事件が発生し、園児が同じく熱中症で死亡している。二つの事件には共通点がある。
 第1に、送迎バスを運転していた人物の身分が同じということである。今回、バスを運転していたのは幼稚園の理事長である。また、記憶によれば、昨年福岡県で発生した事件の場合も、バスを運転していたのは、幼稚園の理事長であった。
 第2に、双方とも先代から園の経営を受け継いだという立場にある人物である。二代目ということである。創業者の事業を引き継いだ二代目には、問題のある人物が多いような印象がある。同族企業の場合は、往々にして甘やかされて大人になった二代目が多く、特に問題がある。もちろん、全員がそうだということではない。二代目であっても、親から厳しく教育されている場合は別であり、先代を上回る力量の持主となることもあろう。
 今回の事件の場合、昨日(9月6日)のニュース映像では、記者の質問から逃げるように疾走する増田理事長の姑息な姿が目についた。その姿からは、責任感というものが根底から欠けている人物であるという印象を受けた。本日(9月7日)、増田理事長は、園内で記者会見を開いたが、冒頭の姿からは、とても事件を起こしたことを真摯に反省している様子を窺うことはできなかった。おそらく弁護士が起案したと推測される書面を、淡々と棒読みするだけであり、その人間性が如実に出ていた。
 マスク越しの顔を見ても、自分の不注意で他人の子供を死亡させてしまった、あるいは取り返しのつかないことをやってしまったという悔悟の念は全く感じられず、ただただ「面倒なことになったなー」という真意が垣間見えるような表情を浮かべていた(少なくとも、私はそのような印象を受けた。)。
 増田理事長は、日頃、この送迎バスをほとんど運転することはなかったという説明があった。仮に日々運転をしていた者が、事件が起きた日にも運転をしていたのであれば、もしかすると事件は起きていなかったとも想像できる。
 大体、73歳にもなる年寄が、大事な他人の子供を乗せた送迎バスを運転すること自体が大きな問題である。人命重視の思想の持主であれば、万が一を考え、送迎バスを運転すること自体を自粛するはずである。しかし、この増田という人物は、自分が送迎バスの運転に慣れていないことを重々承知の上で、故意にバスを運転していたのである。そのため、バスが幼稚園に到着した時点で、増田氏にはかなりの疲労感があったのではなかろうか。人間誰でも、疲れていると注意力が低下する。そのため、自分がバスから早く降りて休憩したいという一心で、車内の確認を全くせずに、そそくさと降車したのではないか(ただし、この点は私の推測である。)。仮にそうだとしたら、実に無責任な行動となる。
 また、報道では、車内に派遣社員の70代の女性も一人同乗していたという。驚いたのは、派遣社員という身分である。本来であれば、幼児のことがよく分かっている保育士が同乗すべきではなかったのか?派遣社員の場合、もちろん経歴にもよるが、通常、保育士のような、子供を観察する注意力はないというべきである。また、70代という年齢も常識外である。70代ということから、70歳だったのか、79歳だったのかは不明であるが、送迎バスの中では、自分自身が車内で転倒しないように座席にしがみつくのが関の山であり、とても余裕・余力をもって幼い子供の保護監督などできるはずがない。
また、今回の送迎バスの窓ガラスには全面的に絵のようなものが描かれており、外部からの視界を遮断していた。極めて異様な光景である。一部報道によれば、このような仕様にするように決めたのは、増田理事長とのことである。乗車している子供の安全を考えれば、そのような視界を遮るような絵は描いてはいけないのである。今回、送迎バスの運行に関する限り、増田理事長が自己弁護できる余地は100パーセントない。弁護士を仮に100人付けても、責任を逃れることは絶対にできない。事件発生についての全責任は、増田理事長にあるのである。
 いずれにしても、社会的に有用な事業を担う者は、せいぜい70歳が上限の目安である。それ以上の高齢者が、会社ないし法人のトップを務めていてもロクなことはない。年寄は、できる限り早く第一線から退くべきであり、後は、若手の後継者にすべてを任せ、いちいち口出しなどしないことである。
 以上のことから、理事長の増田氏は業務上過失致死罪を免れない。高齢女性については起訴猶予となる可能性が高い。増田氏には刑務所内で反省の日々を送って欲しいものである(裁判官は、決して執行猶予を付けてはいけない)。民事の損害賠償責任については、川崎幼稚園、増田理事長及び高齢女性に対し、遺族から民事訴訟が提起されることはほぼ確実である。川崎幼稚園は、事故に備えて間違いなく保険に入っているはずであり、判決の結果、保険会社の方から遺族に対し高額の賠償金が払われることになろう。万が一にも保険に入っていなかったら、万事休すとなる。
 

日時:17:27|この記事のページ

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