今国会で成立が期待された、いわゆる受動喫煙対策法案(正式には健康増員法の改正案)が、先送りになることが事実上決まった。
受動喫煙対策法案は、東京オリンピックが開催される2020年に向けて、日本政府が成立を目論んでいた法案である。タバコの規制が世界的にみても甘いとされる日本に、海外から多数の観光客や選手・大会関係者がやってくる。喫煙に厳しい諸外国から来たこれらの人々に笑われないためにも、受動喫煙の対策は喫緊の課題といえる。
この問題に対する態度は大別すると二つある。
一つは、厚生労働省の原案に賛成する考え方である。厚生労働省の案では、食堂、ラーメン店、居酒屋などは原則禁煙となるが、喫煙専用室が設置されていれば、そこでのタバコは容認されるという。また、30平米以下の小規模のバーやスナックは、規制が及ばず、原則喫煙が自由となるという。
もう一つの考え方は、中小の飲食店の立場を考慮して、喫煙規制を厚生労働省の案よりも緩やかにしようとする立場である。
私は、もともとタバコが大嫌いであり、たとえ同業者であっても、タバコを吸う人との交際は一切断ち切っている(暴力団並みの厳しい規制をかけている。)。したがって、私としては、厚生労働省の原案を支持する以外にない。
昔は、昼食を食べるような普通の食堂であっても、タバコを吸うことが許されていた時代が長く続き、私も店内で食事中に、横にタバコを吸う客が来ないか、いつも気にしながら食事を大急ぎで済ましていたことが日常であった時代が続いた。
その後、次第に、喫煙に対する店の自己規制が始まり、現在では、例えば、昼食の時間帯は禁煙とする店が増えている。私としても、なるべくそのような店を選ぶようにしている。しかし、中には、依然として喫煙が自由となっている店もあり、そのような店の料理をどうしても食べたいときは、開店と同時に店に入って、他の客が来ないうちに、10分程度で食事を済まして、大急ぎで店から出るようにしている。
問題は、居酒屋である。もちろん、全室禁煙となっている居酒屋であって、食べ物もうまい場合は、その店に行くことになる。ところが、ときどき遠く離れた都市で、知人と居酒屋で飲食するような場合は、困る。
2年ほど前のことであるが、三重県四日市市内の中心部に、鈴木三重県知事もPRのために訪れたことがあるという、三重県の海産物を中心とした居酒屋があり、たまたまその店で、知人と会食していた際に、すぐ隣の席に座った若い男性が堂々とタバコを吸い始めたことがあった。私が嫌悪するタバコの煙がこちらの方にもダイレクトに漂ってくるのであるから、私は、すぐに店を出たのであった。
思うにタバコというものは、一嗜好品にすぎず、タバコを吸わないと生きていけないというものではない。また、どの人間でも同じであるが、生まれた時から、タバコを吸っている赤ん坊はいないのである。人間が成長するにつれて、喫煙という悪い習慣を覚え、やがてその悪い習慣が身に付いてしまい、ついにはニコチン中毒患者となって、あたかも覚醒剤の常習者のように、一生タバコから逃げることができなくなってしまうのである。
タバコは、嗜好品であって必需品ではないのであるから、全面的に禁止することが私の理想である。タバコの元となる植物の栽培を禁止する、タバコの葉を元にしたタバコの製造、販売、所持、譲渡を一切禁止する。それで全く問題ないと思う。
タバコの葉を生産している農家については、時間をかけて転作を推進し、完全に転作が終わるまでの10年間程度の期間については、タバコ農家に対する金銭的補償ないし補助を行うことにすればよい。
JTについては、将来は、完全解体の方向で政治主導によって議論を進める。
このような大胆な政策を進めることによって、タバコが原因で発病しているさまざまな病気の対策のために費やしている無駄な医療費を削減するのである。今後、ますます高齢化が進行し、社会保障費が増大しようとしている我が国においては、タバコを全面的に禁止することによって、現在は湯水のように浪費されている無駄な医療費を減らし、その分を社会保障の充実に充てるのである。これしかないと考える。
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