058-338-3474

お問い合わせ電話番号
受付時間:午前10時~午後5時

電話でのお問い合わせ

弁護士日記

弁護士日記

藤井・前美濃加茂市長の動きに懸念を感じる

2018年03月23日

 業者から賄賂を受け取ったという容疑で有罪が最高裁判決で確定した藤井浩人・前美濃加茂市長が、今度は、贈賄側の男性A氏とその男性が贈賄罪で起訴された際に刑事弁護を行った弁護士B氏に対する損害賠償の民事訴訟を東京地裁に提訴したとの報道があった(岐阜新聞2018年3月20日・23日の朝刊)。
 この新聞報道によれば、藤井氏は、贈賄側の男性A氏が、藤井氏をめぐる刑事裁判の中で虚偽の証言をしたと主張している。また、当時、男性A氏の刑事弁護人であった弁護士B氏は、男性Aの有罪が確定した後、藤井氏の控訴審(名古屋高裁刑事部)において男性A氏が証言をする前に、藤井氏の一審判決(岐阜地裁刑事部)を差し入れて、控訴審における男性Aの証言に対し間違った影響を与えたと主張している。
 この報道を受けて、藤井氏の行動にやや疑問を感じた。もちろん、藤井氏が今回、東京地裁に民事訴訟を提起したこと自体は法的には全く問題がない。また、藤井氏が提訴した理由についても、自分が刑事事件で、(贈収賄事件という、政治家人生にとっては致命的な不祥事によって)有罪であることが歴史的事実として残ってしまうことは容認できない、との気持ちもよく分かる。
 今回、藤井氏が今回の民事訴訟を提起した根本的な理由は、新聞報道によれば、民事訴訟を通じて、男性A氏が虚偽の証言を行い、また、同人の刑事弁護人であった弁護士B氏もこれに加担したことを、裁判所の判決で認めてもらい、その勝訴判決を梃(てこ)として自分の刑事裁判について再審請求をしたいということのようである。決して、賠償金が欲しいから、という低次元の理由ではないようである。
 確かに、毎日のように各地の地方裁判所が出す膨大な数の判決は、その全部が正当なものであるはずはなく、中には間違った判決もある。その間違った判決を事後的に是正する制度として高等裁判所と最高裁判所が置かれている。
 私の経験からみても、「どうしてこのような不合理な事実認定ができるのか?」とびっくりした判決もある(このG地裁民事部の判決は、N高裁民事部が相当ではないと判断したようであり、その結果、ほぼ1年後に和解で終わった。仮に、N高裁の裁判官も、G地裁の判決は相当なものであると考えていたのであれば、短期間のうちに控訴棄却で終わっていたはずである。)。
 しかし、上記の藤井氏の論理には相当の無理があると考える。
 第1に、提訴された東京地裁民事部において、藤井氏を有罪と認定した最高裁の確定判決に実質的に矛盾する判決が出るとは考えられないためである。確かに、藤井氏の刑事裁判は有罪が確定していても、別途、民事裁判において、男性A氏の証言は虚偽であり、それによって無実の人間が有罪とされたのであるから、男性A氏の証言は偽証であって違法性を帯びるとの主張は法的には可能である。しかし、そのような主張を東京地裁の民事部の裁判官が認める可能性は、1000分の1以下ではないだろうか?
 第2に、藤井氏が、男性A氏の刑事弁護を担当した弁護士B氏まで訴えていることは、相当に無理筋であろう。弁護士B氏が、一審岐阜地裁刑事部の判決書を、当時のA被告に差し入れたことは、通常の刑事弁護活動から考えた場合、特に違法なものであるとは考え難いからである。仮に、弁護士B氏の今回の弁護活動が違法とされた場合、今後、このような刑事事件において、刑事弁護人は、十分な活動をすることができなくなる危険がある。これはおかしいといわねばならない。
 私は、藤井氏とは全く縁もゆかりもないが、藤井氏は有能な人物であると感じるからこそ、「恥の上塗りにならばよいが」と今回の藤井氏の行動に懸念を感じている。

日時:14:38|この記事のページ

ページの先頭へ

Copyright (c) 宮﨑直己法律事務所.All Rights Reserved.